園長インタビュー

【太郎さんのここが聞きたい!】 VOL.73 森の学び舎の平和教育への道のり、取り組み

前回、学び舎の平和教育について、太郎さんの考察をまとめたものをお送りしました。子供達は既に平和につながる方法を導きだしていたことに気付いたのですが、どうして、そんなことが、出来るようになったのでしょうか?お話しを伺いました。

太郎: 戦争の問題は、大人は何千年も解決できない問題です。
だから、大人が平和について子供に教えることなんてできないんです。

学び舎の子供達が「時間をかけても話し合って解決」できるようになった一番の理由は、

「大人が子供に教えなかったから」

子供に大人が自分たちがやっている話し合いの仕方を教えなかったからです。
そして、

「子供が思考錯誤する時間があったから」

今までになかったものを生み出すには、教えずに時間を与えることです。

山田:「新しいものを生み出すには、教えないで時間を与える!これ、教育の名言集にいれたいぐらいです!」

太郎:とはいえ、この環境をつくるのは簡単ではありませんでした。スタッフも最初は、口だし手出ししたくなるんです。教えた方が早いし、楽だし。

でも、子供達が解決する力を持っているのを目の当たりにすると、
子供達への信頼が出てくるし、
自然と気持ちよく待てたり、見守れるようになるんです。

山田:「そもそも、どうして、急に、平和教育について考察をまとめる気になったのですか?」

太郎:木工クラスで子供が
「飛行機をつくりたい。」
と言い出して、先生が発砲スチロール製の材料を用意してくれたんですが、その飛行機の翼にゼロ戦闘機の模様が印刷されていたんです。

それを、子供が作って持って帰ったら、保護者から
「戦争をイメージさせるものを、教育の現場で配ること気になる。戦争肯定にとられかねない。通常の学校では、そのあたりはとても気を付けている。」
というご指摘を受けて、

そういう意図はもちろんないどころか、思ってもみなかったのだけど、言われてみれば、
「学び舎の平和教育ってなんだろう」
と考え始めたら、一気にいろんなことがつながったんです。

山田:面白いですね。普通はそういう声があったら、
「気付かなかった。戦争を想起させるものは気を付けよう。」
と禁止や排除されて終わるのが多いのに。

太郎:いくら、子供の前から戦争をイメージするものを排除していても、話し合いの出来ないまま、子供が育てば戦争はなくならないですからね。

問題は、ゼロ戦闘機そのものではないと思うんです。かといって、それをスルーするのでもなく、保護者の違和感をほおってはおきません。違和感を受け止めることは、とても大事にしています。

子供達と同じです。違和感を伝えられる関係性があり、気持ちを受け取って、共感したうえで、社会通念とかではなく、その方が何を大切にしたいのか聞いたら、解決方法がわかります。

理論で解決しようとすると、価値感が違うとかみ合わないし、ひどい時は、言い合いや相手のあら捜しになります。仮に、一時的な解決があっても、問題の先送りや排除だけになるんです。それを、ひたすら繰り返すとどんどん不自由になる。やれることが小さくなる。

山田:それが世界中でおきてることですね。

太郎:でも、本当の原因がわかると解決できるんです。

山田:スタッフ教育にとりいれている、NVCやコネクションプラクティスの影響もおおきいのではないですか?

太郎:僕やスタッフは学んだのですが、子供に教えたことはありません。でも、なにかあったときに、気持ちを受け取るという関わり方はしていますが。

山田:そうやって、気持ちを受け取ってもらえた経験ができているのも大きいですね。

私、海外ドラマのリーガルものをよくみるんですが、問題解決のプロといえば、弁護士が代表的。アメリカなんかでは、訴訟社会で、それこそ、論理的にやりあうのが当然でどれくらい、相手のあらをさがせるか、弱みを握れるのかとかで判決の勝敗がきまったり。今の話の真逆ですね。結局、負けた方は遺恨をのこるんですが、ハーバードを出て、優秀な人がたどりつくのがそういう現実だと切ないなとおもっていました。

太郎:みんな、戦争はよくないって、わかっているし、相手のあらだって探したくないんです。でも、だれもやり方がわからなかったんです。今回、この平和になる方法を僕が気づいたことは、動画や講演会で発信していこうと思っています。小さな取り組みですが、グローバル社会の今だから、ちゃんと分かる人には伝わり、意外といっきに広がっていくのではと思うんです。

それに、「世界平和」までいかなくても、他人の気持ちをうけとめられると単純にモテるとおもうんですよ。

だからといって、ヤワなわけではない。日本人は世界にでると主張が苦手ですが、森の学び舎の子は、ちゃんと自分の意見も主張できるし、駄目だといわれたら、なぜだめなのか確認するし、納得するまで、なかなかひきさがりません。そういう意味では交渉にもたけています。

自分を大切にできて、相手も大切できる。
自分の気持ちを解決できるから、相手の気持ちも解決できるんです。

山田:「最高のクローザー(最終的に契約と取りまとめられる人)が育っているんですね。」

 

このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。

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