古今東西、年をとると「最近の若者はなってない。」的な発言をしがちですが、太郎さんは、最近、凄い若者に出会い、逆に大人のなってなさを痛感しました。VOL.29・30は、同じテーマで前編、後編に分かれてお伝えします。
山田:なんか凄い本を読まれたとか。
木村:そうなんです。「小さな天才の育て方・育ち方–小・中・高に通わず大学へ行った話」という本で、吉田晃子さんと星山海琳さんというデモクラティックスクールで育った親子が書いた本なんですが。
太郎さんの運営している森の学び舎を含めて、現在の公教育とは別の方針・理念をもって運営されているスクールの総称をオルタナティブスクールといいます。デモクラティックスクールは、別名、サドベリースクールといい、オルタナティブスクールの中でも、最も枠や決まりがなく、大人と子供が民主的に自主運営し、先生、カリキュラムやテスト、クラス、など一切ありません。
木村:これがすごい内容で、僕にとっても強烈すぎて、ちょこちょこ読みしかできないんですが・・・。海琳さんは、大阪に住む現在22歳の女性で、小・中・高と通常の学校には行かず、デモクラティックスクールに通って、11歳で卒業して、12歳からは、お母さん達が幸せになるための大人が学べるデモクラティック・フィールドのらねこという場を、母親とつくり、運営したそうなのですが、17歳のとき、急に大学に行きたくなって、2か月半で高卒認定試験に合格して、現役で大阪芸術大学にも受かったそうなんです。
17歳まで、ほとんど勉強というものはしてこなかったらしく、九九もできなかったそうなのですが、小学校6年間で学ぶ算数を3日間トータル20時間で、数学だけはプロにお願いして、中学高校で学ぶ数学を12時間、英語、国語、世界史B、地理A、現代社会、生物Ⅰ、地学Ⅰの7教科を独学で2か月半で習得したんだそうです。
山田:確かに凄いですね。でも、他の人ならいざしらず、オルタナティブスクールを運営している太郎さんが、どうして、そんなに衝撃をうけるんですか?
木村:確かに、僕は固定概念がないほうかもしれませんが、普通に小・中・高と公立学校で育ってきましたしね、芯の部分で、まだまだ、ひっかかっているところはあるんです。
でも、海琳さんは固定概念が100%ない感じ。今が幸せだったら、未来は今の連続だから幸せになるにきまっている。未来を心配して、今を我慢しても幸せになるかわからないなら、今幸せなほうを選ぶってことを徹底しているんです。
やりたいことをやったからといって、わがままなわけでもない。やりたいことをやるには忍耐がともなうこともちゃんと分かっている。すごいなあって思って。
でも、実際にあったわけじゃないから、読んでいるだけでは実感は薄かった。
そしたら、その後、偶然、『きのくにこどもの村学園』に一時期通っていた18歳と19歳の姉妹に会うことができたんです。
「学校法人きのくに子どもの村学園」は、1992年、和歌山県橋本市でスタートしました。戦後はじめて学校法人として認可された自由な学校です。
現在は、きのくに子どもの村小中学校、かつやま子どもの村小中学校(福井県)、南アルプス子どもの村小中学校(山梨県)、北九州子どもの村小中学校(福岡県)、きのくに国際高等専修学校(和歌山県)があり、子どもたちの多くが寮生活を送りながら学んでいます
太郎:その子達は、親の仕事の関係で、途中から東京の公立の学校に通っていて、完全なデモクラティックスクール育ちではないんですが、話していると、やっぱり今までの日本人のもっている固定概念が全然なくて、驚きました。
まあ、そのお母さんからして、自由な人で、森の学び舎の父兄の知人で、年末の僕の講演会を聴きにきてれた人だったのですが、自分で料理をつくるのが面倒だからとSNSで僕たちの会食のために食事をつくってくれる人を募ったそうなんですよ。で、その方とその娘さんたちと父兄さんと僕はその見も知らない人の家に行って、ご飯をご馳走になって、話をし、そのあと、遅くなったから、僕は、その姉妹達の家に泊まることになったんです。
姉妹達にとっては普通のことらしく、お母さんが飲み屋で知り合いになった人が家に泊まるのはよくあるからと。
山田:そんな家族、ドラマの中でしかみたことないです。
太郎:で、いろいろ、更に話していると、姉妹共に同じ、普通に体内記憶はあるは、過去生は覚えているわ。(笑)
彼女達には弟がいるんですが、その弟が友達を連れてこないと親が心配しても、「あの子は人とつるむより、一人のほうが幸せを感じるタイプだから。」とよく人を見ていて、相手を理解して、尊重して関わっているんです。
年齢的には若くても、人間的、人格的に、僕より上なんです。なにより落ち着きが違う。まったく嘘がなくて、自己一致している。心と頭がつながっているんです。
ずっと前から、そしてこれからもずっと、幸せなんだろうなって、わかるんです。
なぜなら、20歳を前に、こういう風に生きていくという確固たるものをもっているから。
山田:どう生きていいかわからない大人がいっぱいいるのに・・・。
太郎:普通は大人になればなるほど、わからなくなるんです。こんなことがありました。うちのようちえんに入ったばかりの3歳の男の子が、木の下でうずくまっていたんですが、スタッフが気持ちをきいたら、なんて言ったと思います?
「ぼくのおなかは、だいすきってきもちで、いっぱいにならなきゃならないのに、いまは、みんなのおこっているきもちでいっぱいで、かなしくて泣いている。」
って言ったんです。すごいでしょ!3歳にして、立派な人間で、頭と心がちゃんとつながって、伝えることができるんです。
でも、親や学校、お習い事、塾、成長する中で、そこが切り離されて、成人を迎える頃には、自分がどうしたいのかわからない若者も多い中、
この子達は、19歳でも、それが全然つぶされないままにそだっている。
生き方、物の考え方、あまりにも差があるんです。
知っていますか?今の日本の若者の置かれている過酷な状況。先日、池田市の私立の幼稚園の園長とトークショーをした際に話題になったのですが、先進国で子供の自殺率がトップなんですよ。
これは、子供のせいではありません。
子供をとりまく環境のせいです。工業製品みたいに同じものをつくる教育では、そうもなります。
虫に喰われないように農薬をかけ、肥料たっぷりに大きくし、型にはめて同じ大きさにつくる野菜と、不揃いでも、少々虫に喰われても無農薬で大地のエネルギーをいっぱい受けて育った野菜。
どちらに生命力があるか・・・。わかりますよね。
でもね、僕たちのような学校はこういう風に質問されるんです。
「勉強が出来ると選択肢が増えると思うんですが?」
さあ、太郎さんはこの質問にどう答えるのでしょうか?そして、見えてきた課題に対してどうアプローチするのでしょうか?次回をお楽しみに・・・。
このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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