園長インタビュー

【空飛ぶ園長】 【太郎さんのここが聞きたい!】VOL.121 「空飛ぶ園長のしくじり先生、目覚める教育現場に伝えておきたいこと」

太郎さんは、今、日本の教育現場で既存の教育を変えたいという機運が到来しているのを感じているそうです。その一つにコーチングを取り入れようという動きがあるのですが、森のようちえん、立ち上げ期にコーチングをとりいれていた太郎さんだからこそ、「俺みたいになるな!」と変革期の教育現場に伝えておきたいことがあるそうです。

 

太郎:今、教育現場は変革期に入ったと感じます。先日、中高部の子が所属している学校の校長先生のヒアリングに出向いたのですが、

「木村さんのブログや動画みて感銘受けました。幸せの4因子の話、素晴らしい。」

と言われたんです。ちゃんと読んでくださっているんですよ。

 

時代が変わったなと思いました。フリースクールの先生に勉強させてくださいなんて、ちょっと前はまったくなかったです。

また、海外の日本人学校の先生が中心となってつくられた、教育改革に興味のある先生をつなげる850人のフェイスブックグループがあるんですが、

公立学校の先生比率が高いんです。やる気に満ちた先生がたくさんいます。今までは、なんだかんだ言っても学歴重視でしたが、

「アクションラーニングをとりいれよう!生きる力をつけさせよう!コーチングを取り入れよう!」

等の声があがり、学校現場が変わろうとしています。

でも、僕がそこを通り過ぎてきたから分かるんですが、慎重にすすめていかないと子供が混乱するだろうなと思うんです。

 

山田「そうなんですね!しくじり先生!俺みたいになるな!みたいでいいですね!そういう先人のやってはいけない経験話は貴重です。」

太郎:自壊をこめて子供達のために話そうと思います。先生が間違えると子供は本当にいい迷惑なんです。

子供が学校にいる時間は限られているんです。教育者は子供に大きな影響を与える大事な時間を預かる者ですからね。

 

山田「なぜ、子供が混乱するのですか?」

太郎:今まで先生や学校の言うとおりにさせてきた子供達にとって、これからの新しい教育方針は、自分の気持ちを大事にしたり、自分で考えるものが多いので、当然混乱するんです。だから、先生も生徒も誰もが、簡単につかえて、よりシンプルに分かりやすいものがいい。

 

山田「どういった経験からそう思われるのか、お話いただいていいでしょうか?」

太郎:例えば、コーチングですが、これから

「ティーチングからコーチングへ」

と語呂のよいキャッチフレーズで職場や教育現場にはいっていくと思うんです。

 

僕も最初コーチングをとりいれましたが、いくつか理由があって止めました。

 

まず、今はコーチングという言葉が一人歩きしていると思うんです。一般の人はコーチングって一つだと思っていますが、本当はいっぱい流派があります。いろんな形のコーチングがあると混沌としますよね。 

それだけでも、A先生とB先生のコーチングの流派が違うと混乱を生みますよね。

更に、僕が取り入れたコーチングでは、コーチのあり方を問われるんです。あり方を正すというのはとても難しいしわかりにくい。基準が明確でないから。

 そんなコーチングのあり方を身につけるには、年単位でものすごく時間や回数がかかるし、そんなにスタッフ研修に時間がとれません。

学校に比べるとスタッフが入れ替わるスピードが早いので、身についた頃に辞められると研修の効率がすこぶる悪いです。

 

だからといって、あり方をおろそかにすると、コーチが言葉巧みに子供をコントロールしてしまえます。

仮に先生のあり方ができていても、受ける側の生徒も難しいです。今まで管理されてきたのに、いきなり、気持ちを掘り下げるのは抵抗が出ます。

だから、あり方をベースにしていると、現場で使えないんです。そんなコーチングを学校に持って行くのは危険だと思います。

 

山田「あり方とはどういうものですか?」

太郎:自分のやりたいこと、意見をしっかりと捉えて、自分らしく、気持ちと一致していられるかです。簡単にいうと「あるがままの自分」ですかね。

 

山田「それって、悪いことではありませんよね。」

太郎:でも、常にその状態でいるって難しいです。子供の問題は急に起きますし、僕はスタッフ側も心がざわついていてもいいと思っています。むしろ、ざわついた方が良いと思っている。

常にあり方をしっかりとらえて、俯瞰的に見なくても良いと思っています。コーチング的な生き方は誰でもが簡単には出来ませんから。

 

山田「なるほど、代わりに何か取り入れたのですか?」

太郎:はい、森のようちえんを立ち上げて7年目にコネクションプラクティスを知りました。

まず、凄く簡単でシンプル。最初の研修も最短1日で出来るようになるんです。

子供の気持ちを知るのもカードを使うのでとても楽です。カードを選ばせるスタッフ側がどんな状態であろうが関係ないです。

  • 子どもはその瞬間何を感じたのか?(感情を知るステップ)
  • どもの大事にしたいことはなんだったのか。(大切にしたいことを知るステップ)
  • 何を達成したいから、あるいは達成できなかったから、問題がおきているのかがわかる。
  • それを満たすにはどうすればいいか。(リクエスト。何を知ればいいかを理解するステップ)

これらがわかれば、一見、ややこしい問題が簡単に解決していきます。

 

山田「何か事例を教えていただけますか?」

 

太郎:例えば、照乃ゐゑで、僕がご飯たべていると近くで子供が喧嘩している。

普通、先生だったら

「何があったんだ?」

と聞きますが、これは僕が裁くモードになるんです。

 

でも、コネクションプラクティスの考え方だと、まず、僕が自分のモヤモヤにフォーカスしてみます。慣れてないときはカードで自分の気持ちに近いものを探ります。すると、

 

「落ち着いてご飯食べたい。感情で表すと「居心地が悪い」。私の大切なことを満たすにはども静かになってくれるか僕がどこかいくか

でも、僕は、どこか行くのが面倒くさい。」

という本音がみえてくるので、モヤモヤをもったままこういう発言になります。

 「すいません、僕はここで美味しくお食事したいんだけど、何があったの?」

 

山田「確かに、この方が、言われた方も嫌な感じしませんね。太郎さんの気持ちを大切にしているのに、言われた側も尊重されている気がします。このあと、子どもの気持ちをカードで聞くということですね」

太郎:そう、カードは自分にも子どもにも使えます。

「今の気持ちに近い、カードをここから探して。」

というだけです。あり方は関係ありません。もちろん、僕がやったように自分のモヤモヤにアクセスしてもいいし究極、大人がモヤモヤを無理矢理解消しなくていい。

 

山田「そこが、コーチングと大きな違いだったのですね。」

太郎:もちろん、コーチングは一つの例です。これから、教育現場にいろんなものが導入されると思うのですが、ちゃんと本質をとらえながらやって欲しいと願います。

とはいえ、高度経済成長時代のいわれたことだけやる子どもをつくる教育のままでは老人をささえる高負担国家で不幸になってしまう。

自分の幸せをちゃんと考える、幸せを探求できるよう、早く時代にあった方向に教育を

変えていかなくてはならないです。

まあ、そういう意味でも、新しい教育を10年以上試した人間としてみんなが回り道しなくてもいいように、来年、本を出版するというのもありますね。

 

 

このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。

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