発達障害という言葉は昨今、スタンダードに使われるようになりましたが、森のようちえんの園長太郎さんはどのように捉えているのかお聴きしました。
※発達障害・・・ 発達障害とは、発達障害者支援法には「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。(文部科学省)
太郎:発達障害を生み出すメカニズムってわかりますか?「普通」という枠を小さくすればするほど、発達障害者は増えるんです。
ここで言う「普通」とは、その場にいる大多数が思う「これが正しい」という枠。その大多数が、自分達の理解できない人達を「発達障害」というカテゴリーに置くことで安心します。
でも、国や環境が変われば、一瞬で「普通」という概念はかわります。
例えば、土地を売買するときの平均単位が30坪の日本の都市に対して、10エーカー(12240坪)が基本のオーストラリアの牧草地では、「普通」の感覚は全然違います。
また、耳の不自由な人達の中には、自分達のことを、「目の良い人」と自己紹介する人がいます。「耳が聞こえない」ほうに注目するのではなく、「とんでもなく目の良い」ほうに注目しているのです。
彼らは、日ごろから手話を使うので、水の中や、離れた場所で、いわゆる「健常者」の音声言語が届かない場所でも、相手が何をいいたいのかわかります。その条件下では、彼らの方がよっぽど「普通」と言えます。
森のようちえんや学び舎でも、その「普通」という枠がない。あっても、オーストラリアの牧草地サイズの大きな枠です。
だから、そこに「発達障害者」はいないんです。そうとらえています。
「こいつのここが面白い。」
「これに特化するのが好きなのか。」
となるだけです。「枠」がないところではそれは、ただの「個性」となります。
もしかしたら、外から見たら、スタッフも子供達も、その親もふくめて、森のようちえんや学び舎は4分の1くらい「発達障害」なのかもしれない。そもそも、僕が「普通」の枠にはまっていませんから(笑)みんな、それぞれ特殊能力があるし、とんがっていますしね。
でもね、そもそも「発達障害」は突然変異とかではないんです。突然変異が起きる割合の定義は10万分の1とか少なくても1万の1とか。
現在、発達障害と言われる人は全体の25分の1いますし、LGBTも13分の1くらいなので、
それはもう、確率的にいえば、どちらも存在することが前提なんです。
男女の違いがあるように、人種の違いがあるように、それこそ、普通のことってことですよね。要は受け入れる側の器の問題。これだけ、問題になっていて日本の小学校は森のようちえんや学び舎みたいに「普通の枠」をもっと広げることはできないのでしょうか?あるいは、森のようちえんのような組織がたくさんできるよう援助はしてくれないのでしょうか?
太郎:今のところ無理でしょうね。
森の学び舎では、年間一人につき50万ほどかかって高いと思われていますが、実は公立の小学生1人につき年間約100万円が税金から払われています。その差は何か?
最近、良いネットを使ったタブレット教材をみつけたのですが、年間5万くらいで公立小学校に通ったのと同等かそれ以上の知識(勉強)が身につくんです。知識だけだったら一年5万ですよ。でも100万払われている。
わざわざ人を集めて、遊ばせもせず何を教えているのか?考えたことありますか?
僕の主観ですが、大概の国の教育というのは、結果的にその国に住んで税金をきちんと納めてくれる人を育てようとしているんだと思います。日本だと、勤勉でまじめで和を乱さない日本人。
歴史を振り返れば、年貢を納める農民が全体の8割必要でした。そして、今、日本の全体の8割をしめるのがサラリーマンです。
良い大学を出て、少しでもお給料の良い会社や官公庁に勤めることが、今の日本でも一般的な「普通」の成功。グローバル化といっても、外貨を稼いで、日本を豊かにするのが目的です。
日本という国は日本に税金をおさめてくれる「日本人」を育てているんです。
だから、新しい教育プログラムや他の国で成功したプログラムをもってこようとしても、そこにそぐわなければ、国が本腰を入れて応援してくれることはないと思います。
では、森もようちえんや学び舎はどんな人を育てているのですか?
太郎:個人個人を育てているのです。人間を育てています。
発達障害のことから、えらい話に発展してしまいました。次回は、このアウェイな環境で太郎さんが、森のようちえん、学び舎でどこをめざしているのか、お伝えします。
このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
この記事へのコメントはありません。