園長インタビュー

【太郎さんのここが聞きたい!】 VOL.41 苦労が美徳の時代は終わりつつある

前回、日本という国は日本に税金をおさめてくれる「日本人」を育てている。だから、新しい教育プログラムや他の国で成功したプログラムをもってこようとしても、そこにそぐわなければ、国が本腰を入れて応援してくれることはない。そんなアウェイな環境のなか、「人間」「個人」を育てている太郎さんがどこをめざしているのが聞きました。

 

太郎:確かに行政的にはまだまだアウェイですが、森の学び舎は、キャンセル待ちが列をなしている状態で世間的には随分認知が進んでいると実感しています。

 国は税金をおさめてくれる「日本人」を育てようとしていますが、VOL35の「不登校」の時にも話しましたが、ネットが発達して手軽に情報をとれるようになった今、「いじめ」のせいではなく、日本の教育の枠組みにはまりたくない、本能的に気づいてしまった「能動的不登校」の子供が増えています。

 ひと昔にくらべて、凄い速度であたりまえになってきていませんか?

 

確かに、ここ最近、「ホームスクーリング」という名前で市民権を得ましたよね。

太郎:行政もわかっていて、学校に復帰させるのを目的としたフリースクールには援助を始めています。でも合わない方法で勉強をさせられて、感性をつくる時間を奪われて、自分らしくいられる時間を奪われる場所にもどれるでしょうか?

 最近、特に、親も学校も評価基準が受験勉強にかたよりすぎているんです。クラブ活動でさえ、内申書を意識して入るとか・・。

 ずっと一位を目指して戦い続けなければならない。そして成績が下がれば、たちまち存在意義に疑問を感じてしまう。自己肯定感が低くなるんです。そりゃ、嫌気さしますよ。

 苦労して学んで、勉強が嫌になる。

 

僕が森の学び舎でやっているのは、まったく逆なんです。

 自然の中で遊ぶ環境を提供して、感性を育み、自分らしくいられる時間を用意しています。勉強したかったら、好きな方法で家で勉強してもらったらいい。前にお伝えしたように、プリントは用意していますが興味があるのは、親だけで、子供は一番楽しい勉強方法を選んでいるみたいです。今はネットをつかったタブレットや漫画で十分効率的に面白く学べる方法が充実していますから。知識量も豊富でびっくりするようなこと知っていますよ。

 僕は、自然について人より詳しいかもしれませんが、わざわざ教えることはしません。僕の知識なんて、本当のことのほんの一部なんです。日々新しくなるし、やっても、やってもわからない。

 自然科学は特に観察が大事で、自分で、学んでいくしかないんです。

 それに、これも前に話しましたが、ここでは、失敗がいくらでもできるんです。トライ&エラーを繰り返して、ぶつかって、喧嘩して、自分がやった行動の結果を学び、想像できるようになるんです。

 一般的には失敗しないよう教育されますよね。だから、失敗する恐怖が凄いし、耐性がない。

 

「ホームスクーリング」とちがうのもここですね。ちゃんと違う個性の仲間がいる中で人間関係の構築が出来るし。

そんな中で僕の役割は、「好きなことだけしている大人がいる」ことを体現することだと思っています。

さらに、最近は「何でも仕事になる。」ってところを子供にみせたい。君の大好きな、興味のもっていること、個性が仕事になるんだって。

 

「家庭訪問」を仕事にしましたもんね。今、一回1万円で家に泊まってるんですよね?

そうです。税理士さんにもびっくりされています。「正直、エコツアーも、家庭訪問も、ようちえん事業だって黒字になると思わなった。」って。

 しかも冗談みたいですが、「晴れ男」を商売にしてみてはって話があって。

 この夏、台風が何回も来て、夏旅や潮干狩りに影響があるかと新しいお母さんたちは心配されたのですが、古株のメンバーは全然心配してなくて、

「太郎さんがわくわく楽しみにしているんだったら大丈夫。晴れるわ。」

って言うんです。で、実際、ふたをあけたら、晴れて、問題なく決行。天気予報は雨なのにそこだけ晴れて、イベントが終わり次第、豪雨に。

 そしたら、スタッフが、「野外フェスに太郎さんを連れて行こうかな」って。で、「お金をもらうのは、なんか面白くない」と言ったら、「ビールとか貢ぎ物をします。」って。「それ、いいな!」ってことになって!!

 でも、それで雨がふったらどうしようかと言ったら、「貢ぎ物が悪かった。」ってことでいいって言うんです。

 

「雨ごい」の反対ですね。(笑)太郎さんならできるかも!!

太郎:そうなんです。太郎だから出来るって言われる。でも、本当は誰でも出来ることなんです。

 AIが襲来する時代がそこまで来ている。苦労して学ぶのが美徳の時代は終わりです。既存の教育を受けた中でも50代はなんとか逃げ切れるでしょうが、30代、40代はまだまだ現役で一番苦しい時代になるかもしれない。僕もその一人です。その僕が、好きな事で生きていくことを体現することに意味がある。

 でもね、森のようちえんも学び舎も、別に新しいことをしてるわけではないんです。僕らが子供の頃はまだ、学校から帰ったら友達と自然の中で遊ぶ時間がもっとありませんでしたか?親の世代だともっとです。

 ほんの60年前には普通にあったことを僕は取り戻そうとしているだけなんですよ。

 

確かに!!こんな状況になったのはつい最近のことですね。そして、思ったより早く、太郎さんが望む未来が来るかもしれないですよね。みんなが、自由に遊び始めて、学びたいように学べる時代が来たら、森のようちえんはいらなくなるのでは・・・・。

太郎:それこそが、僕の望みです。僕のやっていることが必要でなくなる世界をつくりたいんですよ!

 

 このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。

 

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