前回、前々回と太郎さんに防災について独自のノウハウをお聞きしました。そんな太郎さんが運営する「森のようちえん」や「森の学び舎」は、どんな状況でも生きていける力をつけることがコンセプトの一つです。
今回の大雨で、活動場所である能勢の「照乃ゐゑ」自体は被害にあいませんでしたが、近くの川は溢れ、小規模な土砂崩れが起き、町に帰る道がしばらく通行止めになりました。
もし、子供達がいるときに、そのような状況がおきたら、どうなるのか太郎さんがシュミレーションしてくれました。
「災害時に必要なのは、いかに冷静に物事を判断できるかなのです。まず、日ごろから、食糧と水の確保をしてあれば、時間的にも精神的にも余裕がでるのは、前回、話した通りですが、そういう意味では照乃ゐゑは備蓄があります。
そのとき、子供達はどうするだろうか。
学び舎の子供たちは、興味のあることをやり続けています。
たぶん、お米を炊ける子はご飯を炊くでしょう。電車好きの子は、どこまで行けば電車が動いているのか情報を検索するでしょうし、小さな子の面倒をみる子もいるでしょう。
みんな、自分が持っている特技を活かして、自分の出来ることをすると思います。
子供達は、日ごろから、遊びを通じて、一人では無理でも、協力すれば出来ることがあることを知っています。
そして、協力を求められるコミュニケーション能力を自然と培っています。
人は一人では生きていけないけど、協力すればいかなる困難ものりきれるものなのです。
それと、もうひとつ、彼らは体力があります。
普段から、野山をかけめぐっているので、小学校3年生の男子でも、5.5キロの荷物を担いで、一日20キロは歩けるんです。
サバイバル時は、体力がないより、ある方がいいですよね。」
「逞しいですね。ちなみに、怪我など救急の対応はどうされているのですか?」
「以前、子供が腕を深く切ったとき、水であらったりすると傷口が余計に開くっていうんで、すぐに、その辺にあるヨモギをつぶして、傷口にあててタオルでぐるぐる巻きにしておいたんです。そしたら、半月ぐらいで、跡形もなくなおりました。
山には漆も結構、生えていますが、誤ってかぶれて痒くなったら、沢ガニとってきて、ちょっと可哀想ですが、つぶして、かぶれたところに塗るといいって、漆職人さんに聞いたことがあるので、そんなときはそうしようかとおもっています。」
「それは、また、ワイルドな・・・。沢ガニってそんな簡単にみつかるんですか?」
「照乃ゐゑあたりはいます。漆の生えているようなところには沢ガニもいるんです。」
「なるほど・・・・じゃあ、救急箱って?」
「救急箱の中身は普通とは全然違うんです。ナイフ・ハサミ・サージカルテープ・ラップ・葛根湯・ティーパック・・・・。
ちょっとした切り傷ならサージカルテープ張っておくと、絆創膏がわりになって子供はおちつきます。
範囲が広い擦り傷には、ラップですね。湿潤療法からヒントを得たのですが。保湿しながら傷を治すので、なおりが早くて、あとが残りにくいように思います。
あと、ティーパックは、口の中を切った時の止血になるんです。子供って転ぶと口の中切るんですよ。そんなとき、ティーパックだと、お茶の殺菌効果もあるし、唾液や血を吸収するし。
歯が抜けた時の止血にもいいですよ!」
「常識が覆りますね。」
「常識って、なんなのか・・。普通、やけどは、冷やすでしょ?でも、ネパールだと逆にあたためるのです。地域によって常識は変わる。僕は、昔からの民間の知恵を、結構選択しています。」
今日ご紹介した内容は、医学的に実証されたわけではない民間療法ですので、皆様に推奨しているわけではありませんが、森のようちえんでは、これが採用されているということをご紹介させていただきました。真似されるときは、ご自分で調べて納得されてから自己責任でお願いします。
それにしても、災害時の話、大人にもあてはまる話でした。大きな災害がおきると、「自分はこれをやっていいていいのだろうか?何の役にもたたない。」と無力感に襲われたりしますが、いつも通り、興味のある分野で、やりたいことをやって、得意な分野で役に立てないか考えればいいのですよね。
「人は一人では生きていけない。でも協力すれば困難は乗り越えられる。」
という言葉が胸に響きました。
※このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、
太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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