4月に入り、1学期がスタートしました。今回は、ブラッシュアップされた特別クラスについて。
特別クラスとは、毎週水曜日、森のようちえん、小学部両方に設定されている、料理クラス、芸術クラス、音クラスなどで、
それぞれの分野で活躍しているプロの方が講師として
子供たちに独創的な授業を提供してくれています。
今年は、さらに、新しい先生をどんどんお迎えして、子供達は、様々な分野のプロの仕事に触れる経験を重ねています。
「保護者会でもお話したのですが、特別クラスってね、僕は、本物を体験して欲しいんです。
このまえ、小学部で木工の2回目の授業があって、箸づくりにはじまって、今はお椀をつくっているんですが、
3時間、子供たちがほぼ休憩なく、正座して集中して彫り続けるんですよ。
大人でも3時間ってキツイじゃないですか。
なかなか上手くいかなかったり、子供の力では彫れても2cmの深さがやっとなのですが・・・。
おしゃべりしながら、やり続けるんです。
(写真を見せて)これは僕の、それ以外は子供が彫ったのです。」
「太郎さんの作品は綺麗で深さもありますね。子供の作品は荒削りですが、正直こちらのほうが惹かれます!」
「子供の作品は味がありますよね。
実はこれ材料も道具も、すごくこだわってあって、
先生は、木について知り尽くしている35年のキャリアを持つ彫刻アーティストの松並義孝さん。
2年前から友人なのですが、すばらしい作品を作られている人です。
彼が、『大人だったら欅。硬くて丈夫だから。でも硬すぎて子供には向かないから檜がいいのだけど、乾いていない。
でもヒバだったらある。ヒバは殺菌力があるし、うわ薬をかけなくてもいい。柔らかい材質だから子供にも扱いやすい』
と言って、いちいち、逆目がどうとか、材質まで考えて材料を用意してくれ、
子供たちが彫りやすいように、子供達専用の台をつくってくれていたんです。
そして、自分の使っている、手入れの行き届いたプロの道具を、
子供達それぞれに合うものを貸してくれたんですよ。」
「なんていうか、まさに本物の体験ですね。」
「そうなんです。最近、一般の学校でも、プログラミングや英語の授業がはじまってきていますが、
誰が教えるかが結構問題になっていて、先生達も努力されていてプログラミングや英語の教室に通われているのですが、
いわゆるプロやネイティブではないですよね。
森の学び舎や、ようちえんでは、実際にできるプロに教えてもらえるんです。
ラーメンの湯切りの仕方や塩の決め方はラーメン屋さんに教えてもらうし。
魚の捌き方は小料理屋の大将に教えてもらいます。
そして学ぶ科目は料理のように連続していくものと、単発のものと、多岐にわたります。
今回、木工していて気付いたのですが、みんな、刃物の使い方が上手いんです。
なんでかなって思ったら、料理教室でずっと包丁使っているから、慣れているんですよ!
料理が彫刻に役立つなんて思ってもみなかったんですけど!!」
「まさに、アップル コンピューターの創業者スティーブ・ジョブズの格言、
『Connecting The Dots』みたいですね。一見無関係なものが、あるとき、結びついていくという。」
「木工も体験で終わるのではなく、箸、お椀とつくるものを変えてもいいし、
お椀を仕上げるまで、2回3回と納得できるまでやってもいい。
子供たちの興味が高いものは連続クラスになります。そうやってるうちに、技術も自然と身についていくんです。」
「カリキュラムが自由に構成できる森の学び舎、ようちえんならではですね。」
「さらに、今年度の新しい試みとして、僕も特別クラスを担当することにしたんです。
僕は旅が出来るし、自然の面白さを伝えることができるので・・・
例えば、春はたけのこ掘りに行くとか、
5月は潮干狩り、一泊で浜松まで行ってウミガメの産卵の保護のプロジェクトや
来年はホタルイカを取りにいったりだとか・・・。
自然と旅をマッチングさせたクラスをやろうかと考えています。
森の学び舎やようちえんでは、『五感を磨くことが出来る』のです。そして、
『生きる力』が『五感を磨くこと』で養われます。」
「2020年からスタートする新教育指導要領のテーマがまさに、『生きる力』ですが・・・。」
「もともと、うちは教育指導要領とは関係なく動いているので、意識しているわけではないのですが。
勉強の仕方がどうとか、表現力がどうとかでもないし。
まだまだ、一般的には『学力=生きる力』なんだと思います。
でも、受動的にあたえられた勉強だけ出来ても、方程式が解けたから生きていけるわけではない。
数学者になって、何かを解き明かすなら別ですが。
『アウトドア=生きる力』でもありません。
人は一人では生きていけません。助け合いで生きている。自分の出来ることを提供して、
自分の欲しいものを提供してもらっているんです。その間をつなぐのがお金。
そして、お金をもらうプロは『人類に貢献し、イノベーションをおこし、新しい価値を創造する』
ということを突き詰めています。
だから、『生きる力』を学ぶには、プロに学ぶのが一番なんです。
でも、そこで学ぶだけでもダメ、実践する必要があります。
自動車の運転免許でも同じなんですが、『学科』と『実技』が必要です。特に『実技』
が重要。『実技』があれば車は運転できますが、『学科』だけでは車は運転できません。
経営も同じ、個人の生きる力を育むのも同じです。
だから、僕は常に、子供達がプロのもとで『実施』できる場所をさがしています。
そして、『五感を磨く』ことを積み重ねて『生きる力』を養ってもらっています。」
なるほど・・・・。『生きる力』の本質をとらえた太郎さんが提供できるものすべてを
子供たちは吸収して成長していける環境が、『特別クラス』として、どんどん整えられている様子がよくわかりました。
次回は、「それって、土日や長期休暇だけでは駄目なの?」という疑問にお答えいただいております。
※このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、
太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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