「来年度、ようちえんクラスやめます。」最初、このセリフを聞いたときは何を言っているのか意味がわかりませんでした。いくら小中学部ができて、「森の学び舎」と名前を変えたとはいえ、森のようちえんからスタートしたのに・・・。でも、お話をきいているうちに、この臨機応変さは、新しいビジネスモデルだとはっきり認識できたのです。
山田「森のようちえんなのに、ようちえんクラスなくすのですか?」
太郎:誤解を招く言い方でしたね。
来年度、ようちえんクラスの募集をしないんですよ。
未就学児の親子クラスはありますよ。
山田「現在通っている、ようちえんクラスの子は?」
太郎:来年、卒業したら今のところ2人だけなんです。
もともと、ようちえんクラスは週3日が活動で、そのうち月、金は、小学部と一緒に活動して、
水曜日だけようちえん用のお料理教室等の特別クラスだったのですが、
来年度はあらたな募集をしないので、彼らには、
この水曜の特別クラスのかわりに、親子クラスの方に参加できるようにしようと思って。
そのかわり、親子クラスのプログラムを手厚くして、
特別クラスに親子で参加できるようにします。
山田「親子クラスとようちえんクラスが合体するんですね?そもそも、なにが違うんでしたっけ?」
太郎:親子クラスは親と一緒に月2回隔週で参加していました。特別クラスはありません。その分お値段はお安く。
ようちえんクラスは親から離れて、週3回登園します。特別クラスも週1でありますから、いろんなことができるようになるんです。
山田「そのようちえんクラスをなくすのはなぜですか?募集したらいいだけなのでは?」
太郎:募集するのって大変じゃないですか?
山田「(絶句)・・・・・ようちえん経営には、普通のことだとおもうんですが。(心の声)・・・・・」
太郎:親子クラスは募集しなくても、問い合わせがくるんです。
山田「・・・・・まあ、安いし、ずっとじゃないから、普通の公立幼稚園の合間にいけるし、そこまでの覚悟いらないし・・・・自然体験を親子で出来るし・・・・問い合わせが増えているのわかる。(心の声)」
太郎:そして、小学部の問い合わせもこの秋、過去最高にきていて、でも、受け入れのキャパがないからキャンセル待ちなんですよ。だったら、需要のない、ようちえんクラスをなくして、親子クラスだけにして、その分、小学部の受け入れを増やそうかと考えたんです。
もちろん、来年、残るようちえんクラスの子には、しわ寄せがいかないよう、むしろ、選択肢が増えて手厚くなっています。それに、そもそも、保護者さんから
「このままでは、同い年の子との交流がすくなくて心配。」
という声があがっていたので、親子クラスと合流すれば、同い年のお友達は一気に増えてこの、同年代とつるませたい問題も解決します。
山田「でも、もともと森のようちえんからスタートしたのに、いいんですか?」
太郎:何も、最初の形にこだわらなくても、時代の要望に応じて園の形態やプログラムは変えていけばいいと思っています。幼・小・中一貫校になっただけですし。人気のある親子クラスやキャンセル待ちのでてる小学部をそのままにして、需要のないようちえんクラスをお金や時間をつかって募集するの方が不自然でしょ?
山田「確かに。では、どうして、ようちえんは問い合わせないのに、小学部の問い合わせが増えているのですか?」
太郎:一つ考えられるのは、大阪府下で森のようちえんは10園ほどあるんです。でも、小学部があるのは今のところ、うちだけ。もう一校、準備はしているようですが・・・。ということは、大阪府の野外教育系の卒業生がみんな、うちを狙ってくるんです。
だから、年中の御父兄が卒業後の小学部の席を確保しようと下見に来るんです。
山田「ようちえんではなくて、小学部の?どうして、ようちえんから入らないのかな?」
太郎:今、すでにいってるところがあるんでしょうね。でも、当然、内部進学者が優先されるんですけどね。小学部から入ると3年間うちに通った子とレベルが全然違う問題もあるんです。特に特別クラスの料理の腕が・・・。フライパンや包丁の扱い方とか・・・。だから、来年度からは、外部から入った小学部の1年生には、1年間、親子クラスの特別クラスで小学部の特別クラスについていけるよう基礎を身に着けてもらう準備をしてもらおうと考えています。
山田「なんともフレキシブルですね。普通、会社や組織って一回つくったプログラムを変えるのは難しいのに。ある意味、成り行き任せのようにもみえるけど、自転車操業とは違う。なにが、あるんでしょう?」
太郎:一応、成り行き任せではなく、状況はちゃんと分析して対応してるんですよ。まず、この9月に状況を鑑みて、結構、ブレイン系のスタッフと打ち合わせを重ねました。保護者の意見も聞いたうえで、子どもとっても、親にとっても、スタッフにとっても、僕自身にとっても一番いい環境を探したんです。
つまり、「関わる人がみんなが幸せになる園運営」というのが柱にあるんです。そのためには、前例にとらわれないことが重要です。クラスもプログラムも状況にあわせて形を変えます。
園のコンセプトである「今、やりたいことが一番」を実現するために組織を固めないんです。
そこを追求した結果、前にもお話ししましたが、うちのスタッフはやりたい仕事しかしません。でも、うまくまわって、誰かのやりたくないことは、誰かのやりたいことなんです。だから、みんな得意なことを持ち寄って、ご機嫌に仕事しています。
研修も随時おこなっているし、園の教育方針を確認することで、ブレない環境も生まれています。
スタッフは精神的にもどんどん成長していくので、誰かがミスしても誰もおこらない、あたたかく見守る余裕があるんです。とっても仲がいいから、一緒にいて気持ちいい。そういう雰囲気はつたわるでしょ?
だから、人が寄ってくる。するとお金がまわってくるんで、自信になる。この9月は過去最大のボーナスを支払うことが出来ました。自転車操業ではこうはいきませんよね。
山田「聞けば聞くほど、理想的で新しいビジネス・モデルですね!」
太郎:そうなんですかね。理想的で新しいかどうかは当事者なので自分では見えないんですが、コンセプトを大事にしたら、こうなりました。特に子供のプログラムとスタッフのミーティングや研修は力を注いているのは事実です。次回はこの秋から新しく取り入れた「円座」というプログラムについてお話しますね。
このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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