20年4月から改正虐待禁止法が成立し親の体罰が禁止されることになりました。改正法では、親は「児童のしつけに際して体罰を加えてはならない」となったことで、巷では一部戸惑いの声もあがっているようです。そのあたり、太郎さんはどう考えているか聞いてみました。
太郎:まず、しつけでたたく必要はありません。基本的には話すだけでOKで、子供に必要なことを、どうやって伝えるか、どうフォローしていくかが大事です。
でも、誰も学校で、親になるために必要なことなど教えてもらっていないでしょ?親になるための学校なんてない。
瞬時に自分におきた感情がどこからくるのか、本当は何を感じているのか理解して、今必要なことを子供にただ伝えるのって、トレーニングうけてないとかなり難しいです。
禁煙だって、禁煙外来があるのに、 虐待してしまう親に必要なクリニックや受けやすい支援プログラムもない。
親がたたいたり、どなったりするときって、怒りにまかせているのですが、感情の暴走してしまう時って、自分では気付けないで怒っているんです。
家族や仲間がとめてくれるならいいのですが、核家族がすすみ難しくなっています。
なんのサポートも、ノウハウもないまま、たたかない躾をしましょうって言っても、練習もしたことない人間に棒高跳びを飛べっていってるようなものだなと思いました。
「確かに、親になるための学校。親になるための授業って、もしかしたら、一番大事な事なのに、ありませんね。あたりまえのことだけど、あらためて、ちょっと衝撃受けました!!
私も心理学やセラピーで『感情』について学び、トレーニングもうけました。セラピーでクライアントさんの問題が幼い頃の親の心ない言動が原因になっているのをさんざんみて、絶対に自分が親になるときはそうはならないと思っていましたし、のぞんで、のぞんで生まれてきた高齢出産の子供なので、しつけであってもたたいたり、まして虐待などありえないと思っています。
それでも、実際、子育てしていくなかで、育児放棄や虐待する親が出来てしまう状況があることも実感しました。
その局面になったとき、学びやトレーニングがなければどうなっていただろうと思います。」
太郎:世の中には、様々なアンガーマネージメント、いろいろなコミュニケーションの学びがあります。なんでもいいんです。自分のあうやり方を選んで、ともかく、練習することが大事です。僕自身と森のようちえんでは、NVCやコネクション・プラクティスを取り入れています。
※NVCとは NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)とは、1970年代に、アメリカの臨床心理学者マーシャル・B・ローゼンバーグ博士によって体系化され、提唱された、自分の内と外に平和をつくるプロセスです。
家族や友人から、職場、組織、国際関係まであらゆる人間関係を、支配、対立、緊張、依存の関係から、自由で思いやりにあふれた、お互いを豊かにし合う関係へと変えることを可能にする考え方、話し方という「方法」であると同時に、私たちに「なんのために、どう生きるか」を問う、根源的な「意識」でもあります。それは、頭(思考)で判断・批判・分析・取引などをするかわりに、自分自身と相手の心(ハート)の声に耳を傾けることから始まります。具体的には、観察(Observation)、感情(Feeling)、ニーズ(Need)、リクエスト(Request) の4要素に注目しながら、自身の内なる対話や、相手の言葉の奥の意図の推測、相手との対話を行います。誤解や偏見、思い込みを注意深く見きわめ、「今」の気持ちと、その奥にある大事に思っていること・価値を置いていることを明確にしていくと、本当にやりたいこと・望むことを見出し、自らの力で実現する原動力が身のうちに生まれます。このプロセスは、お互いの内面を侵さず、生来備わっている力を奪うことのない、すなわち自分と相手を尊重する方法でもあります。非暴力のゆえんです。ここから、ともに平和をつくりだす道をひらきます。(NVCJAPANホームページより抜粋)
※コネクション・プラクティスの成り立ち コネクション・プラクティスは、以下の2つのスキルをベースに成り立っています。 1.NVC (非暴力コミュニケーション)による「共感的コミュニケーション」コネクション・プラクティスでは、NVCの4つの要素のうち、「感情」と「ニーズ(必要としていること)」を集中的に学び、恥や罪、責任を取る気持ちからではなく共感をベースに行動することを目指し、共感力を高めていきます。2.ハートマス研究所の「クイック・コヒーランス・テクニック」心臓に意識を集中し心臓と脳の働きを同期することで、脳の働きが最大限に活性化すると同時に、自律神経バランスと身体の諸機能が向上します。この技法によって肯定的でリラックスした状態がもたらされると幸せや感謝、愛を感じる「オキシトシン」というホルモンが分泌され、●洞察力が増す●共感力が増す●視野が広くなり、創造力が増す●個人の力が無駄なく継続して高まる…といったことが起こります。
上の2つを学んだ後に行う”洞察を得る”テクニックでは、思いもよらなかった解決策や、ヒントを得ることができます。心の声に意識を向ける「共感力」と、物事の本質を感知する「洞察力」が養われ、それらの相乗効果から自分と他者の両方を大切にした新しい解決策がもたらされ、人間関係が深まり、物事が創造的・効率的に進むようになるスキル。それが、「コネクション・プラクティス」です(一般社団法人ラスールジャパンHPより抜粋)
要は、「自分の心につながること」。そうすると他人へのアクションが変わってきます。
そのために必要なのは、自分や感情が暴走している相手に適切な質問が出来るかどうか。
「どうしたの?」と聞いてしまうと、事象の説明が帰ってきます。
「その時どんな気持ちだったの?」と聞けば、事象ではなく、気持ちにフォーカスが当たり、本当は何が満たされないのかの情報を得ることが出来ます。
そうすると、自分や相手の気持ちを満たした行動をとることができるようになるのです。
森のようちえんや学び舎では、これらの資格を持ったスタッフや研修をおこなっているので、子供達は何かあったとき気持ちを聴いてもらえる体験を常にしています。
こういう体験をしている彼らは大人になったとき、自然と自分とつながり、自分の子供の気持ちを大切にできる親になるでしょう。
「それって、まさに『親になるための学校』ですね!」
そうですね。子供はすぐにできるようになります。難しいのは大人で、善悪の判断が邪魔したり、言い訳をしたりしてしまいます。もちろん学んでいても練習重ねていても気付かないうちに感情が暴走してしまうことがあります。僕の場合、子供の頃は、妹がそんなぼくをやんわりと止めてくれました。今では、森のようちえんで、スタッフがその役割をしてくれます。(笑)
「そうか、身近に信頼できるニュートラルな存在がいれば、自分の行き過ぎたとき教えてくれるのですね。そういう存在を持てるって幸せですね。自分自身が家族や誰かのそういう存在になりたいとも思うし。」
太郎:家族の中で、お母さんはそういう存在になりやすいと思います。お母さんがいつも一緒にいる子供にそういう会話ができるようになれば、子供の会話や行動もかわり、家族の過半数がそういう会話になれば、いつもは外にいるお父さんも自然と変わってきます。
それには、お母さん自身が、誰かにちゃんと気持ちを聴いてもらえる体験をしていることが大事なんです。
保護者会では2か月に1回、こういった話をする場を設けていますが、森のようちえんの保護者以外のお母さんたちにも要望が多く、様々な場所で「太郎カフェ」を始めました。
どんな、悩みだっていいんです。子育てや旅の話、お金のこと、僕で相談にのれることはのりますし、解決方法をしっていたり、知らないこともあったりするでしょうが、まずは、ちゃんと僕に悩みを聞いてもらいに来てほしいです。(笑)そして、必要ならNVCやコネクション・プラクティスをベースにしたコミュニケーションで自分とつながる練習を一緒にしてみましょう!
というわけで、一般向けに「親になるための授業」がうけられる機会が提供されています。ともかく、何か悩み事があれば、相談に行ってみましょう。「太郎カフェ」詳細はこちらをご覧ください。↓
このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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