私、山田は今、国家資格のキャリアコンサルタントの勉強をしているのですが、まさにキャリア教育そのものを実践されている太郎さんに、その中核をなす「経験」について、どのように考えられているのか意見をお聞きしました。
山田「学び舎の子は普通では出来ない「経験」ができていますが・・?」
太郎: これ、説明会に来られる父兄に勘違いされることが多くて
「太郎さんの今までの人生の引き出しの多さを活かして、子供にいっぱい「経験」させてください。」
と言われるんですが、僕は、「それは出来ない」と伝えているんです。
山田「どういうことですか?」
太郎:その子に必要な「経験」かどうか分からないじゃないですか?
僕の「経験」を押しつけたくないんです。
「経験」って直感が大事だと思うんです。誰々に「やっておいた方がいい」と言われて
やる「経験」は無意味かなって。
それに色々「経験」するのが大事っていう考えがありますが、世の中のことすべてを経験することは出来ないし、時間は有限です。直感で、面白そうって思えることを選択していけばいいと思うんですよ。
新聞で考えるとわかりやすいです。毎日の新聞、約3000のニュースがあがっているそうです。でも、全部読みませんよね。興味のあるところだけ読んでいるでしょ。
山田「なるほど、でも、情報をチョイスできる3000の記事が載った場が新聞にはありますよね?太郎さんは子供達にどういう場を用意しているんですか?
太郎:そういう意味では、世界、生活のすべてが学びの場で、学び舎は子供達を制限せず、自由になんでも選択出来る場を用意しています。
大人の下手な知識や考えを押しつけない場です。
僕たちは、山によく行きますが、虫の一生は本には書ききれません。図鑑と本物の虫では
情報量が全然違います。自然科学は本では学べません。
小さな子が、「なぜ」を連発する時期がありますが、
「電車がなぜ動くのか」
を説明するにはかなりの知識が必要です。だから、学ぶ材料には事欠きません。本来、いきているだけで問いだらけなんです。
山田「本来、生きているだけで問いだらけ。名言ですね。」
太郎:そのときに大人は、子供の純粋な「どうして」を大切にして、答えを教えず「どうしてだと思う」と聞き返してやるといいと思っています。
これはこうだと教えたくない。
算数ひとつとっても、マイナスとマイナスを掛けたらプラスになる理由を考えたことありますか?そういうものだと丸暗記しているでしょ?でも、成り立ちを考え抜いてわかっていれば応用できるんです。
もちろん、知らなくても良いことも一杯あります。電気の成り立ちをしらなくても、生活できるし、車の仕組みを細かくしらなくても運転できる。
子供が興味をもったものを自分で考えて調べればいいんです。
大人が情報を与えすぎると子供はクエスチョンを持たなくなります。自分が何に興味があるかわからなくなって、最終的に大人に与えられたものを好きだと勘違いするかもしれない。
山田「確かに塾でつめこまれすぎると、子供が興味を覚える隙がなく、モチベーションや創造性がしぼんでいく気がします。でも、将来、何かの役に立つかもって思うんですよ。」
太郎:まあ、でも、親が子に良いと思った物や情報を与えるのは本能で、仕方ないですけどね。
でも、せめて、選択権は子供に与えてほしい。ここだけは、保護者さんやスタッフにしっかり伝えています。
だけど、そう簡単にできることでもなくて、みんな戸惑います。
山田「といいますと」
太郎:例えば、子供が嫌そうな顔をしていたので、
「嫌なら私が手伝ってなんとかするよ。」
と声をかけ、サポートしたら上手くいった。こういうケースどう思いますか?
山田「選択権が子供にあるかですね?もう少し詳しく情況を聴かないとわかりませんが、
普通に親子でもありそうなシチュエーションですね。」
太郎:僕ならまず、嫌そうな顔と判断しないで「どんな気持ちなの?」と聞きます。嫌そうな顔っていうのは僕の主観で実際はそうではないかもしれないから。
そして、子供がどうしたいのか聞きます。
山田「なるほど、まずは聴く。そして、大人が勝手に判断して誘導しないってことですね?」
太郎:子供は嫌そうな顔をしても嫌ではないかもしれない。本当は苦労をしても自分で成し遂げたいかもしれない。あくまで子供に選択権があるんです。さっきの流れでは、子供が不在なんですよ。大人が「経験」をうばってしまっている。
「経験」とはモチベーションがありきなんです。
山田「これが、今日の本丸ですね!!!」
太郎:料理をやりたいなら、料理を学ばせてあげればいいのに、親とか先生が考えて、その前にいろいろ経験させようと大学にいれたりしますが、大人の与える選択肢は狭いと理解しておかないといけません。
でも、親はやっぱり難しいかもしれない。だから、せめて、学び舎では子供に選択権を与えて、子供が自らやりたい、いろんなことを挑戦する場を与えている感じです。
山田「与えることで邪魔をしないんですね。では、何も教えない?」
太郎:何かしたいといってきたら、道具の使い方は教えています。
会社経営をしたい子には、最低限、必要なことを。
使い方を間違えて、ケガをするようなことにはならないように。
理科の実験に例えるとわかるかな。
実験機器の使い方を知らないと、間違って爆発をおこすかもしれないから
どうしたら危ないかは教えています。ただ、何をどう実験するかは子供達次第です。
このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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