4月に中高部が信州で仕込み、池田のハウスで管理してきた醤油ができあがり、11月7日に醤油しぼりが行われました。そのとき、太郎さんは中高部に起きている変化を感じたそうです。
太郎:6人で醤油を4月に仕込んだんですけどね、11月まで興味のあった子は2人だったんです。
あとは全く興味なし。やっと、興味が分かれてきたと感じました。
山田「なんだか、嬉しそうですが・・・?良い方向に向かっていると?」
太郎:そうです。こんなとき、以前だったら、この2人はやらない子に向かって
「みんなでやろう。なんで、一緒にやらないんだ!」
とみんなでやろうモードで怒ったりしていたと思います。
でも今は
「自分達には面白いけど、君らと自分は違うねんな。」
と思うようになっていたんです。
山田「相手のアイデンティティーを認められるようになったということですね?」
太郎:そうです。
「今後、何かやるとなっても、それぞれになっていくだろうな。」
と感じられました。
いろんな人間が集っているのだから、それが自然な流れです。
でも、大人の感覚では
4泊5日も醤油づくりにいって、自分が深く関わったのに
いよいよ醤油を搾るときに何もしないって
モヤモヤしますよね。
でも、あとの4人は、今はやりたくなかったから、やらなかった。
中高部のみんなは、それぞれに
醤油づくりするのが
好きか嫌いかが分かった。
何かに出逢った時に
「これが好き」「嫌い」
「興味がある」「興味がない」
がわかることが大事なんです。
それを一つ一つ積み上げていくと
自分の好みが分かるようになります。
学校、卒業して好きな事がわからない人が多いのは
みんな平等に体験させる教育も一因していると思います。
学び舎では、徹底して、今やりたいことをやれる。
「せっかくだから、もったいないから、みんなでやろうよ。」
は大人の発想です。
山田「みんなでやろう!モードがなくなるとどんな良いことがあるんですか?」
太郎:まず、醤油造りに興味をもっている子には、作業が独占出来て嬉しいし。
醤油搾りをやらない子にむけてずるさを感じなくなります。
サボっているとも思わないし。
やらない子は興味がないだけだと受け止めてもらえる。
心にゆとりがあるし、遊びがあるんです。
受け入れてもらえる中高部は
子供達にとって最高に居心地の良い場所になりつつあります。
最初は昨日まで小学部だったのに、急に中高部にはいると
親やスタッフの対応がかわって
「しっかりしなさい。」
「お兄さん、お姉さんになりなさい。」
「物事を動かさないのはなぜ?」
とまわりの期待が大きくなる傾向がありましたが
スタッフミーティングを重ねて理解してもらいました。
保護者も、そんな環境を受け入れ始めています。
なぜなら、学び舎は本当に何もしないと分かったから。
円座や個人面談、メールでやりとりして
納得してもらうようにしました。
山田「なんか、凄いですね。」
太郎:こちらがぶれないように言い続けました。
山田「どんなことですか?」
太郎:「子供に任しましょう。子供達の時間のペースは違うし、見守っていくしかないから」
と大人の時間軸や価値観に晒されないように守ってきました。
保護者が落ち着くと子供達も落ち着きました。
そうするとゆとりが生まれるし
ギスギスしない。
安心感が出てきて、本当に好きなことをやっていいって分かって
スムースなコミュニケーションができるようになるんです。
スタッフもよく頑張ったと思います。
楽な道をどうしても教えたくなる。
でも、子供達は教えなければ
いろんな方法を考えます。
山田「でも、人間は知識を積みあげているから進化するという考えもあると思いますが。」
太郎:もちろん、そうですが、
知識を最初からあたえるのには反対です。
不思議がなくなってしまうから。
興味があることを
考えて、考えて、
分からないから調べる。
そうすると、先人が積み重ねた知識が
貴重なものとして吸収されるんです。
数学も本質を教えず、公式だけ丸暗記させるのは特に
本当に意味がないし、僕は暴力的とさえ思います。
山田「本質は教えて良いんですね?」
数学に興味があるならね。
好きな子はほおっておいても
自分で調べて本質を見つけるし、知りたがります。
好きじゃない子には極端な話、教えなくて良いんです。
だって、すべてのことを理解するのは不可能なんだから。
好きなことを深めたらいいんですよ。
今回の醤油づくりが、それを象徴してくれたように思います。
このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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