前回、子供達が一見何もしてないようにみえる熟成期に入った中高部の話をしましたが、
ちゃんと観察すると明らかに成長が見られ、小学部にも良い影響を与えています。それは、照乃ゐゑで小学部と一緒に活動する月曜日をきっかけに見えてきたそうです。
太郎: 彼らの成長を感じる印象的なことがありました。
月曜日は「照乃ゐゑ」に集まって、小学部も中高部もみんなで過ごす日なんですが、
小学校一年生の子が中高部の子のカードゲームの箱を壊したんですね。
その中高部の子は今までなら同世代が同じような事した時に
「弁償しろ!」
と言うちょっときついタイプだったんですが、
このときは、淡々と
「なんで、そのときに言わなかったの?そういうのは言ったらいいんだよ。」
とめちゃくちゃ大人な対応してたんです。
後から、その中高部の子を話を聞いたら
「弁償できるわけもないし、彼なりに、自分の言葉で謝ったり、頑張って直そうとしてきたら
ゆるしてやろうと思って。」
と言ったんですよ。
山田「今までなら、そんな、タイプの子ではなかったのに、というのが凄いですね。太郎さんが言っていた、紳士が育ち始めている!!」
太郎:そうなんです。
しかもね、小学部の5.6年生が、その様子をしっかり見てて、こういう風に下の子に対応するんだって学んでいたんですよ。
中高部の存在が、小学部の見本になって、良い影響を与え始めているんです。
週に一度でも、異年齢の子が一緒に集うことの意味を感じました。
下の子は出来なくて当たり前、失敗が当たり前って分かってくれる人がいる環境だと
思い切って失敗出来るんです。
これが、同学年だけだとどうしても比べてしまう。
山田「なるほど、同じ条件で集められるとどうしても自分にも他人にも厳しくなるかもしれませんね。」
太郎:そうなんです。でも、ずっと一緒でも、いろんなポジションがあかないし、下の子が甘えてしまうから駄目で、
今の中高部の彼らが小学部を卒業したおかげで、今年の5.6年は、小さな子の面倒をみる役割がまわってきて、意識が変わりました。
そして、意識が変わって、どうしたらいいのかと戸惑う時に、ちょうど、中高部が週一だけ、一緒に過ごしてくれるのでお手本が見られる。そして、また、自分達だけになったときに実践するという。
山田「いい循環ができていますし、進級への憧れにつながりますね。」
太郎:そうなんです。小学部の子が、元中高部の子に任せていた羽釜でご飯を炊くことについても
自分達で炊かないといけないので、僕に炊き方を教えて欲しいって言ってきて・・。
自分達でやっていく責任感が出てきています。でも、やらなければならないことになるとしんどいから
楽しみながら身につけられる仕掛けをして教えています。
山田「といいますと?」
太郎:小学部の僕の山クラスで「火遊びの仕方教えているんですけど、1年生からマッチ箱、1箱まるまる渡して、マッチを点ける練習するんです。
2本目ぐらいまでって怖いんです。でも、10本目くらいからは余裕が出てきて誕生日のイメージでハッピーバースデーを歌ったりし始めるんです。
小さな子にとっては、マッチで上手く擦れるようになるまで丸一日かかる子もいます。
その間、僕は、上の年次の子に、格好いい、マッチの付け方を教えたり。
そして、杉の葉に火をつけて、マッチの小さな火を大きなたき火にし、とことん火を点けることを味わう。
そうすると楽しみながら様々なことが身についていくんです。
山田「きっと、今の中高部の子も、そうやって太郎さんに関わってもらって育ったわけですが、自分達だけの活動の時は、どんな雰囲気なんですか?」
太郎:落ち着いて話をしていますね。
ゲームの話とか、旅の話とか、何が好きで何が嫌いかとか、普通の日常会話です。
なんか、変な例えかもしれませんが、朝ドラの商店街のおじさんが床屋で集まって話しているような。
散歩途中のおばさん同士が話しているような・・・。年金生活者みたいな・・・。のんびりとしています。
学び舎の目的は「幸せに生きる力」を育むことですしね。
山田「ちゃんと、幸せに生きていそうですね。」
太郎:そーなんですよ。
中高部では会社作りをすると言っていましたが、準備をすすめていくなかで、
いろいろカリキュラムを詰め込むのは違うって思ったんです。
会社づくりも、ツール。幸せの一部、通過点、幸せに生きる練習のための素材でしかありません。
だから、実は今、彼らが、高校生になって起業したかったらすれば良いし、そのときは手伝うぐらいのスタンスです。
個人個人が何かをなしとげるといいぐらいにおもっているんです。
そのためには、前回も話しましたが行動が広げられる環境と自由時間が必要なんです。
山田「小学部でも、結構、やりたいことができる環境でしたが・・。」
太郎:それが、小学部との延長という感じではないんです。似ているけど別の活動。
キャベツと芽キャベツが違うぐら違う。見た目似てるけど全然違う植物でしょ。
そんな感じです。
周りから見たら一緒にみえるかもしれませんが、全然違う。(笑)
でも、これって、今までにないことなので、知らない人からすると批判されかねないと思うんです。
山田「確かに、知らないこと、なじみのないことって、ちゃんと知らずに批判されたりしますからね。」
だから、取材依頼や公機関からの視察依頼もあるんですが、
誤解されて伝わって、本来の活動ができなくなると困るので、今はお断りしています。
見学枠も一杯だし。発信は、このブログで知ってもらったらいいかなって。
ただ、オルタナティヴ活動は広げたいので、スクールをやりたい人を支援するなど個別で話を進めていこうと思っています。
おかげさまで経営が回りはじめたので、
次の5年は、
モチベーションが高い保護者や子供が運営に関わる仕組みづくりを模索できたらと考えています。
このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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