太郎さんと助産師の辻本有美さんによる「性と生のお話」。今回はこれから大人になる前に知っておきたいこと。ふたたび「同意」を深く掘り下げています。後編はお互いを大切にすることがテーマです。
【自分を大切にすること 相手を大切にすること お互いを大切にすること】
有美:これは、ずっと言っていることなんですが、「同意」って、まず、自分を大切にして、その上に相手を大切にしてというこの順番が大事なんです。
これが、同じ方向を向いているときは良いんですが、意見が反対だったり、違っていた時に、
、自分と相手とのバランスとるのが難しいです。
相手と意見が違うとき、お二人はどうされていますか?
山田「これは、なかなか、普通は難しいことで、いわゆる、価値観のすり合わせですよね。
でも、太郎さんの学校は、子供たち、これの連続で、得意なのではないですか?」
太郎:もう凄いですよ。確かに価値観のすり合わせをしていますよね。大人みたいに遠慮もないし。
自分はこれがしたいというのを、ちゃんと持っている子であればあるほどね。
学び舎の子達は、
「今はこれだ!」
というものをシャキッと伝えますよね。気持ちいいよね。
「ああ、そうか、今はそうなんだね。」
って相手も受け入れるし。僕たちの時代とはすごく変わっていきつつあると思います。
有美:学び舎の子供の一人が、こうしたいっていったことが、まわりにはどうしても、受け入れられないとき、どうするんですか?
太郎:ちょっと前の話ですが、
どの公園に遊びにいくのか決めるとき、スタッフ2名で行ける公園が限られた中、
他の子の希望とは違う一人の低学年の女の子が、
自分の気持ちを言語化するのにも慣れてないし、
どうしたら良いか分からなくなったんですよ。
うちの園は、多数決では決めない方針なので、
「とりあえず、話して決めないと駄目だね。」
となった時に、
手を変え品を変え、文字に書いてみるとか。話を聞いてあげるとか。
それでも、
「わからない!」
というなら休憩もはさんで、決めるまで結局2時間かかったんですよ。
その場から動けないから、みんな、お腹減って、お弁当食べたり。
「早く決めろ」
という意見も最初はないわけではなかったんですが、
その子が本当に真剣に悩んでいる姿をみたら
「早く決めろ」
って、みんな言わなくなったんですよ。
その子も、必死に
「その公園はどんなところなの?」
って、きいてみたりして、
始めてから2時間後にようやく腑に落ちて、動き出したんですよ。
そのときは、みんなスッキリしていましたね。
遊ぶ時間が短くなったのに
「早く行きたかった。」
とは誰もいわなかった。
そして、その子は決め方が分かったんです。
次回からは、時間をかけず、スッと決められるようになったんですよ。
そのときに、自分の気持ちを投げないで
時間はかかったけど受け入れてもらう経験をした子とそうでない子では
相当、差はあると思うんですけどね。
山田「それ、凄い話ですよね。
前回、有美さんのお話で、
自分の気持ちがそもそもわかりますかというのがありましたが、
まさに、その子は分からなかったんですよね。
そこを、みんな、仲間は寄り添ってくれたってことでしょ?
太郎:そうなんです。子供たちは凄いんです。
一方、大人は大変で、スタッフミーティングのとき、
Aさんの、本当に大したことない、ポッと発言した言葉に、
Bさんがひっかかったんです。
それで、Bさんに
「それどういう意味で言ったの?」
と質問されてAさんは
「別に意味はないよ。意味はなく言った。」
と答えたら
「意味はなく、人間は、言葉を発しないでしょ。」
となって、
そこから大変ですよ。2,3時間、その話ばっかり。
掘ろうとする人と掘られまいとする人。
「その言葉には意味はない。」
「人は意味なく言葉を発しない。」
子供だったらもっと、いろいろ、解決のアイデアだしてくるんだろうけど。
大人はずっと平行線でした。
きっと、Aさんは、
自分の中から生み出されたことなのに
意味は見いだせないということは
自分がつかめていなかったのかもしれません。
自分よりも他者を優先して生きてきたのかなって思います。
だから、自分の発した言葉に意味を
見いだせない現実を、他人に問われただけで、
罪悪感まで覚えてしまってました。
僕らの世代も、若い世代も、
自分がつかめていないと苦労するなって思います。
「同意」も出来る出来ないという話よりも、自分がわからないから、相手に合わせるしかないようになっているかなってなっているんではと思います。
有美:大人でも子供でも、どういう想いをもっているか分からなくなったときに
「ちょっとまって、私がわかるまでまって・・・」
とさっきの女の子みたいに言って良いんだなって思いました。
つい大人は、周りの人に迷惑だからという気持ちで
とりあえず選択を急ぎますからね。
まってもらった子は、大人になってからでも、待とうって思える。
太郎:そういった話はまだまだたくさんあります。(フライドポテトジェンガ鼻くそ事件動画でご覧ください)
本当に、そういうことはよくやっています。
有美:それがまさしくお互いを大切にするという関係ですね。
それをマッハで早く解決しなければならない。同意しなければっておもっていたけど、それだけ、時間をかけてもいいんだ。かけた方がいいんだって気付かされました。
太郎:僕も子供たちを見てて、ゆっくりで良いんだって分かりました。徹底的に自分を見て、相手も自分を見て、お互いにどうしたいか摺り合わせて、もう一回持ち帰って考えると言うことを、本来はやって良いんですよね。なのに、ものすごい短いスパンで結果をださなければいけないって勝手に思っていますよね。
有美:わからないこともいいんだなって。早く白黒つけなくても、わからないことを大事にして良いんだなって。
太郎:待ってもらえる相手と過ごせる時間って安心できる時間だなって思って。そういう人と一緒に過ごせばいいんだと思うんですよ。
森のようちえんでは、そういう待てる場をつくっているんですね。
「早くしなさい」「早く決断しなきゃ」という想いから解放してくれる場を。父兄として感動を覚えました。
このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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