取材予定日だった2018年7月5日は50年に一度といわれる大雨が西日本に降り猪名川が増水し避難指示のアラームがひっきりなしに鳴り響く状態でインタビューを断念。天気が落ち着いた3日後にお話をお聞きしました。
「今回、西日本を中心に河川の氾濫や土砂災害など大変な災害となりましたが、太郎さんは今回のことを自然に関わられる立場としてどうみていらしゃいますか?」
「まず、各地で総雨量が1000mmを超えたという報道がありましたが、わかりますか?イメージしやすく言うと、1mmはたたみ一畳の広さに一升瓶の水をこぼした感じなのです。それが、3日くらいで1000本注ぎ続けられたのですね。とんでもない量ですよね。
山は通常スポンジのように雨を吸収するのですが、許容量をこえると地滑りを起こしたりします。
西日本の特徴として、杉とひのきの山が多く、しっかりした自然の山に比べて吸水率が低い傾向があります。また、瀬戸内などは山と海がせまっていますが、川を護岸工事などでまっすぐにすればするほど、大雨がふると土砂がいっきに山から流れ出ます。そして、その土砂が川底やダムの底をあげるので増水すればあふれ出るリスクが上がります。
本来、川は蛇行して土砂を左右に貯め、土地を肥えさせる役割をしていたのですが、人間が山や川をいじり、自然の循環の仕組みを一回でも壊した段階で、あきらめるしかない。
自然災害ともお付き合いしていくしかないのです。
いざとなったら、逃げるしかない。
だから僕は、今回、活動場所や友人が近くに住む川が警戒水域にならないかネットで川の水量をウォッチしていました。
今回、僕が住む池田を流れる猪名川が助かったのは、『空梅雨』で雨があまりふってなかったのと一庫ダムの放水のタイミングが良かったから。
でも、京都の桂川があぶなかったので、友人に連絡をしました。
テレビで何度も
『命を守るための行動をおこしてください。』
と言っていましたが、普通の人は、そんな教育は受けていないので、何をし、何を持ってどこに行けばいいか咄嗟にわからなかったそうです。
それで、とりあえず高いブランドのバックを2階のさらに高いところに避難させたそうなのですが、気持ちはわかりますよね。」
「私もそんな感じですね。太郎さんは何をどうするのか知りたいです。」
「キーワードは【命】【情報】【避難所で快適に過ごすための物】を確保できるかどうかです。
まず、【情報】をとり、ハザードマップや近くの川の状況、交通の状況を知り、自分が今いる場所が安全なのか、避難所に行くのがいいのか、車に乗って遠くへ逃げるのがいいのか?地形と体力と残された時間によって【命】を確実に守れる選択します。
家が大丈夫なら、断水に備えて水を貯めていきます。このあたりは前回の地震の備えと一緒なので、そちらを参考にしてください。
避難所に行くとしたら、両手が使えるようリュックを用意します。スーツケースは
災害時には運び難いし、逆に足手まとい。
両手が空いていれば子供の手を握ることもできますしね。
持って行くものは、
【命】を守る、最低限の食糧と水。
避難所に行ったからといって食料がすぐ届くとは限らない。特に今回のように何か所も被災したときは尚更です。最低3日分は用意します。具体的には、我が家だと、お米2キロ、味付けのり1(これがあれば、ご飯だけでも食べられるから)と味噌かな。あと子供がすきなので、ラーメンを持って行きます。
そして、なんといっても水。飲み水にもご飯を炊くにも絶対必要。でも普通に運ぶと重いので、僕は前回紹介した携帯用の浄水器を用意。
【情報】を得続けるために携帯とその充電器。
電気が得られないことを想定して、僕ならソーラーバッテリーとか、小さな焚火で電気をおこすのとか持って行きます。
【避難所で快適に過ごすための物】として、テントと寝袋、エアマット。あと子供の気持ちが安定するためのもの。いつも持っている人形がそうなら、それが必要です。」
食料は、どこでも火を起こして調理をできる太郎さんならではの発想です。
でも、ふだんから生命力を高める食事がいかに大事かを知っているからこそ、トップに挙がってくるのだと思いました。たぶん、あたりまえのように、小さな軽い鍋もかばんにぶらさげていると思います。
子供が好きなラーメンを用意するのも、さすが!これは、身体の栄養というより、わくわくが、心に栄養を与えてくれることを知っているからでしょう。
あと、感心したのは、避難所で快適に過ごすためのもの。
ここには、日常でも、自分を大切にし、人間が元気でいられるためのものが凝縮されています。
たとえば、テントでちゃんとしたプライベートスペースを確保すること。これは心理用語でバウンダリーというのですが、適切な境界線をひき、心の安定をはかることにもつながります。
また、寝袋やエアマットは、質の高い睡眠をとることがいかに大事か表しています。
そして、子供の心の安定グッズ。災害時、敏感な子供は想像以上に傷ついています。大人は生き延びるために必死で、おもちゃや人形など余計なものと考えがちですが、こういうときだから、子供の心に寄り添うものが必要なのです。
「子供の手をつなげるリュック。子供の好きなラーメン。いつも持っている人形。」
太郎さんの防災グッズの要所、要所に、子供への優しい配慮が現れています。
未来をつくるのは間違いなく子供。
子供の心と身体を守ることが、一番大事な「命を守るための行動」。
インタビューをしながら、そんな、あたりまえで大切なことをあらためて、気付かされました。
※このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、
太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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