園長インタビュー

【太郎さんのここが聞きたい!】VOL.8『特別な時が日常に』

前回は、特別クラスが充実し、様々な分野のプロから「生きる力」を学ぶ授業が始まっているというお話でした。

今回は、「それを日常的に学ぶ意味は?土日や長期休暇だけでは駄目なの?」という疑問にお答えいただくところからはじまります。

「まずは、『日常』という概念なんですが、時間的、回数的な制限ってないんです。

学び舎のように週に2回お米を炊いているのを『日常』とするのか?

4月に学び舎で、たけのこ掘りに行くけど、年に1度しかない。自然ってそんなもんですからね。でも、毎年繰り返していたら『日常』になるのか?

『日常』の時間的な感覚は人によって様々です。

自然を相手に仕事をしていると、1年に1度の体験でも『日常』になります。
キノコ採り、魚釣り、たけのこ掘り、お米作り。

どれも僕には『日常』なんですが、回数という見方からすると、イベントに参加する人と一緒ってことになる。

昔、『馬の学校』というのをやっていました。初めてきた子供にとっては、馬との時間は全て『特別』です。でも、何年もするとだんだんと特別感が薄れ、スタッフ側に立つと当たり前の『日常』になる。

こうなってくると個人の受け取り方次第で『日常』にも『特別』にもなります。

本物を体験すること。これは常に特別感がある。でも回数を重ねるとだんだん『日常』に近づいて行く感じがしてくる。

それが森の学び舎やようちえんで提供しているものなのかなって思います。そこから本当の意味での『日常』にするかどうかは、子供たちがそれを続けるかにかかっていますが・・・。

例えば、料理のクラスだけで料理をしていたら、日常性は弱いけど、家で料理をすれば『日常』に近づきますよね。

だから、1年に一度しか行かなかったとしても、『日常』にして行くことは可能なんだと思います。

『意識』次第ですよね。」

「要は自分の意識次第で、誰でもいくらでも自分のものにできるわけですね。でも、何事もそれが、難しいですよね。それが自然と出来たら苦労ないわけで・・・。」

「そうなんです。そのために、『本物』に触れ続けることが大事なんですよ。
『特別』な時が『日常』になれば、その『特別』な何かは人に教えられるレベルになっていくでしょう。

クオリティが違うんです。

英会話スクールに通う人に英語を教わるのと、英語を日常的に使う人に英語を教わるのは
大きな違いがあるのと同じです。

生きた英語を学ぶのと生きていない英語を学ぶ。
それくらい違うものだと思います。

だからこそ、『本物』を教わり続けることが大事だと思っています。

前回も言いましたが、人は一人では生きていけない。お互いが、人の役に立ち、人を幸せにするから、生きていけるんです。

『本物』は人を幸せにする力を持っています。だから、『本物』を学ぶことが、『生きる力』を育むことになると思います。

また、照乃ゐゑでは、自然や暮らしが常にあるという状態で、子供たちは、自然の中で過ごす時間が圧倒的に多いから、自然との距離はすぐ『日常』になって行きますね。

『自然』ってね、『本物』の中の『本物』です。まさに突き詰めたもの。

人間の身体だって自然の産物で、こんな小さな肝臓だって、人の作る工場一つ分以上の働きをしますよね。

新幹線の先頭は、かものはしを模して抵抗の受けにくい形にしているし、マジックテープは、通称ひっつきむしって呼ばれる草の実を参考にしているし、自然の中には、生活を便利にするアイデアがいっぱいあります。」

「そういう意味では自然は究極の先生というわけですね。」

「そうです。自然の中にいると、感性が磨かれ、価値あるものを生み出すアイデアが自然と生まれます。ただの棒きれが、子供にとっては史上最高の剣になったり、船をこぐオールになったり。

僕の友人には、
『お金の代わりに、笹の葉100枚持って、お寿司を食べに行く。』
という昔話の狐か狸みたいなやつがいるんですが、すごいでしょう?

笹に価値があるのを知っているんです。彼もお寿司屋さんも。幸せの物々交換です。お互い知識と知恵とコミュニケーション力あってのことですね。

子供達だって、自然の中では、あたえられたおもちゃはありませんから、あるもののなかで他の子に受け入れられる遊びを生み出すのに、すごく考えています。

面白ければ、受け入れられヒットさせる喜びを感じられるのです。」

「これ、社会人になったら、企画力やプレゼンという名前ですごく求められるやつですね。」

「そうなんです。これを大人になってから学ぶのは大変です。社会では誰も教えてくれない。だから、僕は、子供たちに、生きるためになにより必要なもの、『五感を磨く』環境を提供し続けているんですよ。」

まさに、これって、2020年に変わる大学入試のポイント「思考力、判断力、表現力」や「主体性をもって多様な人々と学ぶ態度」を本当の意味で育むことにもなるのではないでしょうか。国も太郎さんがいっているような「生きる力」をつけさせたくて、改革されているのでしょうし。

でも、実際に試験や授業に落とし込むところで、様々な問題に直面しているのですが、太郎さんは、そこを軽々と超えて、まさに「本物」の「生きる力」を育む挑戦をつづけているのだと感じました。

※このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。

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