太郎さんの長男が今年、中学生になります。
彼は、父親がつくった森のようちえん、そして、森の学び舎の小学部に4年生まで通いました。
今回は、一人の親として、保護者として、オルタナティブ教育を総括してもらいました。
太郎:上高地の山岳ガイドだった僕が、森のようちえんや学び舎の園長になったのは、そもそも、
長男がきっかけでした。子供の教育を考えたとき、日本の既存の幼稚園や小学校に疑問を感じたからです。
まず、息子を森のようちえんにいれて良かったと思うのは、バランスの良い身体作りができたことです。
既存の体操教室とか、何かのスポーツにしても
場所は整備されていて、地面はフラットですよね。
それって、偏った身体になりがちなんです。
でも、森のようちえんでは、川で泳いだり、山を登ったり、
でこぼこなところで体力づくりをしました。
だから、バランスの良い身体になっていると思います。
それと、競技やテストもないので、
仲間との変な優劣、競い合いもなかったのも良かったと思います。
そして、素直に育っています。
言うことを聞くという受け身の素直ではなくて、
疑問に思ったことは、素直に聞けるし、素直に言える。
そういう素直さ。
なにより、自分のしたいことが分かる子に育った。
今、受け身中心の教育のせいで、自分のしたいことが分からない子が多いんです。そのまま大人になって、自分のしたいことがわからない大人も増えています。
山田「森の学び舎で学ばせる理由にあがる、自己肯定感はどうですか?」
太郎:学び舎の説明会で、自己肯定感が育まれる話はするんですが、実は親としては自己肯定感はどうでもいいんです。
山田「!!!といいますと?」
太郎:結局、自己肯定感って、身体が元気だったらあるんです。だから、身体のケアが出来れば良いと思うんです。
「鬱」だって、精神が弱いのではなくて、身体が参っているだけだから、身体をケアしたら良くなるっていう考え方があるんです。
実際、誰だって、体調が不安定だと、やる気も失せるし、どうでもよくなりませんか?
逆に、体調が良いと、やる気が出るでしょう?
自己肯定感も体調次第なんです。体調が悪いと僕だって一瞬で、自己肯定感なんて消えます。
だから、いかに身体のサインに気付けるかだと思っているんです。そして、ちゃんとケアできるかどうか?
それと、やりたくないことやっていると疲れることを知っているか?
だから、結局、やりたいことは何か、やりたくないことは何か知ってることが、身体をととのえることにつながって、大事になってくるんです。
息子は、自分の好き、嫌いがちゃんとある。こういう土台を学び舎で築けていますから、
いまでは、どんな情況になっても大丈夫だなと思います。
山田「それは、一生の宝物ですね」
太郎:自然が遊び場だったのがよかったんです。
雨の日も、天気の日もあるし、それに身体が対応していきました。
冬は寒いし、夏は暑い。それぞれの情況に応じて、自分の弱いところ、強いところ、癖、を全部、実感できたことが強みです。それが、温室育ちだと、自分を失いがちになると思います。
山田「普通の公立の小学校に5年生から通われたということでしたが、どうでしたか?」
太郎:まず、勉強は問題ありませんでした。多分、中学校からでも全然問題ないと思います。
高校の建て直しを経て国会議員になられた荒井優さんからこんな話をきいたことがあります。
今年の立憲民主党2月3日教育調査会、有識者へのヒアリングで話された議題
「なぜ、中学3年生の三割が、小学校4年生の学力なのか」
中学3年生に抜き打ちテストすると小学4年生レベルの子が30%いたという話です。とうぜん、のこりが全員中学3年生レベルというわけではありません。
山田「どうしてなんですか?」
太郎:学びが定着していないんです。一番の問題は学び方が選べないことでしょう。
例えばオランダは、タブレット、シュタイナー、モンテッソーリ、学校の特色に合わせた勉強ができ、その学校が合わなければ、転校も出来ます。先生も、教材も選べるんです。
ところが、日本は教材、学校、教わり方、何も選べません。しかも、先生から生徒へ一方通行の授業で、わからなくても、ゆっくり聞けない、個別指導もできない。
小学4年生でつまずいたら、一般の学校だけではもう追いつけません。だから、塾が必要になってくる。
その点、YouTubeは、ためせるし、巻き戻しができるし、先生が選びたいほうだい。繰り返し見放題。最近学び舎ではYouTubeをすすめています。
先生の方は、再生回数のために、見てもらいたいから、ものすごく分かりやすく教えてくれます。時間も結果的に早く学べます。
僕からすれば、普通の学校にいっているからと安心しているほうが怖い。
今の教育方法では気がつくと学力が全然ついてなくてとんでもないってことがあるのではと思います。
学力に関してはYouTubeのほうが断然伸びやすいですね。
だいたい、自分に置き換えて考えてみてください。
学校で毎日6時間、週5日間集中して勉強できますか?週30時間の内容
8割覚えていられますか?
子供によって、調子の良い時間も違います。今の教育だったら、2週間休んだら、学校について行けないです。コロナで自宅待機になったらおしまいですよ。
山田「だから、塾にお願いするんですよね。でも、特殊な塾でないと受け身であることは変わらない。でも、勉強って、放っておいて、子供ってやる気になるんですか?」
太郎:子供の勉強のやる気は、学校だろうが、学び舎だろうが、環境では変わらない気がします。やる子はやるし、やらない子はやらないし。
ただ、学び舎の子は、歴史を漫画で学んだり、算数は「はいちさん」のYouTubeでわかりやすく、楽しんでまなべるので、学んだことの定着率はいいんじゃないかな。
あと、一通り漫然とうけて、いったいどこが、わかってないのかわからないより、自分がどこのカリキュラムがぬけているか分かっているのも、僕は大事だと思っています。
だから、総括として父親の立場からみても、森のようちえん、学び舎を選んだことは大正解でした。
山田「そんな風に育った子達の多くが3月卒業したんですよね。」
太郎:卒業式で保護者の方に、
「学び舎をつくってもらって、ありがとうございます。」
と言われたんですけど、そんな大それた事はできてなくて、
「僕のほうこそ、お付き合いいただいてありがとうございます。」
と思っています。(笑)
このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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