「学び舎の弱点を克服出来る教材を見つけましたよ!」
森の学び舎では、いわゆる小学校の授業はありません。
活動の中で分からないこと、知りたいことがあれば、スタッフに質問は出来ますが、一方的に教えられる授業はないのです。
もちろん宿題もありません。なので、子供達の勉強は各自のご家庭に任せられています。
ですが、太郎さんも、何か学び舎に合う教材はないか、ずっとアンテナをはっていました。
「学び舎の子供達は自分達のやりたいことを実現するための手段として、
あるいは興味を満たすものとして、自然と文字を知り、本が読めるようになり、社会で必要な計算ができるようになります。
感性や創造性という意味では申し分ありません。
ですが、『考える力』をどう育てるかという課題は僕も父兄も感じていました。」
「これは、森の学び舎に限らず、今、日本中で問題になっていることですよね。
計算問題は解けるけど、文章題になると弱い小学生から、
学歴はあるけど、自分の頭で考えられない指示待ち新入社員まで、
『考える力』がないことによる問題はいまや社会問題になっています。」
「そんなとき、『考える力』を育てる教育法を提供している『どんぐり倶楽部』の存在を知ったのです。
目を引いたのは『宿題は危険』という言葉。早速、本やホームページを読むと、かなり、共感する点が多いことに気付きました。
●自然の中で大いに遊び、感情、感覚、感性を磨く重要性。
●9歳~12歳以前に「読み、書き、計算」の徹底反復と高速多量学習をさせることの弊害。
●何にでも応用のきく、根本的な考え方をマスターさせること。
普段から僕が考え実践していたことです。それが、なぜ、いいのか。
そして、既存の学習法がなぜ悪いのかが、長年進学塾の講師をされていた視点で書かれていました。
そして、イメージを使って思考力を育む勉強法が紹介されていました。
ですが、それが、実際、学び舎にどう取り入れられるのかわからなかったので、
直接、『どんぐり倶楽部』の運営者の糸山泰造先生にお会いしてきたのです。」
糸山先生は大手進学塾を経て、塾講師の指導に携わってこられました。
既存の教育法に限界を感じ、1985年から遊びを通して子供の成長をサポートする『どんぐり倶楽部』を運営し、
その後、保護者主催の教室や勉強会を開催。
著書やホームページを通じて、この思考力を育む勉強方法を提供されています。
その根拠になっているのは、米国国立精神衛生研究所のデーターから導きだされた「思考回路網の刈り込み現象」。
人間の脳の思考回路網の作成は7歳から12歳で終了し、それまでに使われなかった回路は不要だと脳が判断して削除が始まります。
つまり思考力の養成には臨界期があるので、
それまでに、遊びや質の高い算数の文章題などで多種多様な思考回路をつくる環境をととのえることを勧めており、
低年齢での単純反復学習で反射的に答えをだす考えない教育に警鐘を鳴らしています。
「正直、ホームページも本も分かりにくいんですが、わざとそうされているみたいでした。」
「今の時代は、なんでもかんでも分かりやすさが求められますが、考えることの大切さを唱えられていらっしゃるから、ホームページもそのスタンスなのでしょうかね?」
「ここで、あきらめてしまう人には門は閉ざされる。どんぐりにアクセスするにも思考力が必要なのですね。僕の場合は、直接会うという方法をとりました。直接聞けば良くわかりましたよ。
●どのくらいの勉強量かというと
なんと1週間に2時間だけ!
年長(6歳)から小6(12歳)まで全部で700題の「良質の算数文章問題」が用意されていますが、
全部する必要はなく、1週間に2題でいいのです。
これで、難関中学の入学試験に臨める思考力がつくんだそうです。
後は、自然の中で遊ぶのが一番いいのだそうで(*^_^*)。
●どのような問題か
例えば年長の問題
『こぐまの はちみつが 3こ なくなりました。のこっているのは8こです。では、なくなるまえには なんこ あったのでしょうか?』
これを1回だけ読んで絵に書いて考えます。わからなくてもいいんです。
考える過程でイメージしながら考えるのが大事なのです。
わからないものや、間違ったものはそのままにしておいて、一回忘れて、2か月後のもう一度解くのだそうです。そのときには自然と解けるようになっていたりします。
だから先生や親は教える必要はありません。」
「びっくりするほど、森のようちえんや学び舎向きですね。」
「そうなんです。なので、教材を揃えました。それを、ようちえんや学び舎に通っている子は好きなだけプリントして、やってもらったらいいようにしています。」
「算数だけなのですか?」
「メインは文章題を絵に書いて解くことでいいそうですが、すべての教科においてイメージする勉強法が応用できるそうです。」
「漢字は?」
「漢字も脳にイメージするやり方で覚えます。だから、繰り返し、ノートに書いて覚えるようなことはしません。
漢字も読めるけど書けないという保護者の不安をきいていましたが、最初は読めたらいいのです。
読みと書きは別の能力で、書くことは暗記能力なので、極端な話、12歳からでもいいということでした。
でも、もちろん、したくない子にどれも無理やりさせることはしません。やりたいなら、こういう教材があるってだけです。
つまり選択肢の一つを増やしたということです。
子供達が勉強したくなったときに、自分に合う教材を選んでもらえるよう、これだけにこだわらず今後も良い教材は探していきたいと思っています。」
このインタビューをまとめるのに糸山先生の本を拝読したのですが、子供を育てる親として、いや、その教育を受けて育った大人として今までの価値観をくつがえされる衝撃を受ける内容でした。
認知が広がってきたら、塾や学校の在り方は大きく変わり、子供も大人ももっと時間ができて、やりたいことが出来る人が増えるのではないかと思います。
ただ、思いっきり外で遊べる環境が重要。今の日本では一般的にはそれが難しいのですが、森のようちえんや学び舎は、それが日常なのです。
彼らを応援したいという方は、さつきやま森のようちえんmorino-youchien@eggs-nature.netまでお問い合わせください。
※このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、
太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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