前回は、怒りについて太郎さんの考えをお聞きしました。
話を聞いてない、命の危険があるといったときは、「雷親父」になってしっかりと怒る太郎さん。
では、子供が怒っている時はどうするのでしょうか?
森のようちえんに通う年齢は、まさにイヤイヤ期、真最中。
日頃、天使みたいな子供達が、
大人では理解しがたい理由で子鬼みたいに顔を真っ赤にして自己主張し怒ります。
そして、子供同士の喧嘩ももちろん勃発!
親としてはヒヤヒヤしますよね。
そんなとき、太郎さんや、スタッフはどう対応するのかお伺いしました。
「前回の最後にも少しお話しましたが、
森のようちえんでは、子供が時間の途中で『帰りたい。』といったら本当に帰るし、
逆に帰る時間になっても『もっと遊びたい。』といったら遊ばせます。
ただし、みんながつきあったりはしません。
やりたいことをやるために、自分につきあってくれるスタッフを探し、交渉させます。
森のようちえんのモットーは『今やりたいことが一番』ですが、甘やかすのとはかなり違います。
言ったことの責任を、子供にとらせるようにしているんです。
いい意味でも、悪い意味でも。
言葉にすれば、実現することを、子供たちは身をもって知ります。
例えば、あるとき、川に遊びに行った途中で帰りたくなった子供がいたのですが、
他のスタッフに一緒に帰るのを断られ、僕のところにきました。
僕は『バス代はみんなと一緒に乗る時の分しかないから、歩いてなら帰っていい』と伝えると、
『それでも帰りたい』というので、バスで15分くらいかかる道を4歳児の子と二人で歩いて帰ったのです。
彼は、歩ききり、そして、次からは二度と途中で帰りたいとは言わなくなりました。
『イヤ』なのは、自分のしたいことが受け入れられないから『イヤ』なので、
『イヤ』が受け入れられたら『イヤ』は止まるんです。
ありがたいのは、スタッフも保護者も了解してもらっているので、
普通だったら実現しない子供の希望が現実化します。
頭ごなしに『そんなの無理に決まっている』と否定するのではなく、
人として意見を尊重するのです。
園での様子を見て、保護者のみなさん、ご家庭でも実践していただけているようです。
まずは、話を聞いて、何が嫌なのか、どうしたいのか、それはどうすれば実現できるのか
大人は大真面目に『イヤ』を受け止めるんです!!
そうすると『イヤ』は大体止まります。
小学部の子は、それを、身を持って何度も経験していますから、
小さな子が無理な『イヤ』をいえば、現実化してその子が大変な思いをすると思って、
『この人達、本気やから』といって、なだめてくれたりもします。
親やスタッフの言うことに反抗してた子も、お姉さんお兄さんの言うことはスンナリ聞き入れやすいみたいですよ。
あと、喧嘩ですが、
子供の喧嘩はするのが当たり前で、大人の喧嘩に比べたら、ずっとピュアです。
出し切ったらスッキリするし、次の瞬間から遊びはじめたりします。
僕やスタッフは、まずは、見守っておくのですが、
こじれて来たら、ともかく、お互いの言い分を出し切らせるようサポートします。
感情が高ぶって、話せなくなったら、「ゆっくり息をしな。」と促したり、
落ち着かせるために抱きしめることもありますが、無理に怒りは止めません。
お互いが納得するまでやるしかないんです。
でもね、ようちえんの子は怒って5分くらいですよ。
使える言葉も少ないし言い争いの内容もシンプルです。
小学生は、体力があるので、もっと長く続くかな。内容も論理的になってきますが、
それでも、10分本気で怒れたらいい方です。
そして、小人数の良さで、万一、翌日に気持ち引きずっても、
遊びの内容によっては、メンバーが足りなくなるので、楽しむために和解せざる負えなくなります。
また、10人につきスタッフは2人つくようにしていますから、
目が行き届くので、いじめも起こりにくいですね。
喧嘩はあっても目の前でやらすようにしています。
隠されないように対応するには、ちょっとしたコツが必要で、喧嘩に限ったことではありませんが、
あえて『禁止』はしないようにしています。
『禁止』されると、子供であれ、大人であれ、人間は、隠れて何かするようになるので。
そうそう、喧嘩とイヤイヤ期でこんな話がありました。
その日、あることで喧嘩していたようちえんの二人が、帰る頃に、『もっと公園に残って遊びたい』と言い出したんです。
僕たちは、いつものように、彼らの希望を受け入れて、
『自分達で帰りたい時に帰ってくる。』ように言って、
比較的近くのところだったので、安全上、こっそり見守るスタッフを残して先に帰りました。
すると、子供たちは、しばらく遊んだあと、自分達だけで帰らなくてはならない事態に直面して、
お互いだけを頼りにして、しっかり手をつなぎ帰ってきたんです。
喧嘩していたのなんて、どっかにいってしまっていましたよ。
そんな風に、幼少期を育った小学部の子供達は、大変、大人で紳士的な対応をしてくれます。
例えば、スタッフよりも、場に目が行き届くようになったり、
新しい子の面倒をみるために提案をしてきたり、
自らすすんで手伝いをさりげなくしておいてくれたり、
みんなに食べ物が行き渡っているか気を配ってくれたり。」
大人でも、そうはいきませんよね。小学生で、それは、凄い!
子供の喧嘩やイヤイヤ期の対応は家庭でも取り入れてみると面白いかもしれませんね。
さて、次回は、新年度にむけてブラッシュアップされた特別クラスについてご紹介します。お楽しみに!!
※このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、
太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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