園長インタビュー

【太郎さんのここが聞きたい!】 VOL.32『トラブっている子供への魔法の言葉』

 今回は子育てしている親目線である質問をしました。その結果、森のようちえんや学び舎の子供たちが、この半年で大きく変わった核心が見えてきたのです!!

 「子供達は、けんかしたり、いじめたり、いじめられたり、よくトラブルが起きると思うのですが、そういうとき、太郎さんは、どういう関わりをするんですか?」

太郎:まず、多少のことだと、僕をはじめ、園では、大人も子供も誰も何も言いません。ほおっておきます。これは、一人の時間ができ、冷静になってリセットできるのでとてもいいです。

 ややこしくなるのは、やじうまが入る事です。

 まず、親や先生が小さいころから、子供のけんかに干渉し、ジャッジしているのを見ていますから、年齢があがってくると子供同士でも「裁き合い」が始まります。

 当人同士の喧嘩だったらシンプルなはずが、ややこしくなる。

 これは、大人の社会の反映でもあります。何かあると、メディアで大騒ぎになりますよね。そして、コメンテーターという肩書で「お裁き」が下される。

 普段自分を抑圧している度合いが強い人ほど、裁きたがる傾向が強いです。

 

「確かにそうですね。では、どんな場合でも、まったくほおっておくのですか?」

太郎:いえ、そうではありません。こじらせているなと思ったら、心にフォーカスしたコミュニケーションをとります。これは、半年ぐらい前から園でとりいれているNVC(ノンバイオレンス コミュニケーション)の手法です。

 コミュニケーションは大きく分けて2つの方法があります。一つは「頭」でやるコミュニケーション。もう一つは「心」でやるコミュニケーションです。

 例えば、一般的に、子供が喧嘩して泣いていれば「どうしたの?」って聞きますよね。これが「頭」でやるコミュニケーションなんです。「どうしたの?」って聞かれたら、子供は「●●君がこんなことした。」と答えます。そして、悪者が生まれるのです。

 でも、「心」のコミュニケーションではこう聞きます。「今は、どういう気持ちなの。」と。すると、子供は「今は、怖くて、悲しい気持ち。」と気持ちを答えます。わかりますか。主語が、●●君ではなく自分なんです。この質問をすることで、自分の気持ち、自分の心とつながれるのです。

 前に話しましたが、3歳の子が、トラブって木の下で泣いていて、スタッフが気持ちを聞いたら「ぼくのおなかは、だいすきってきもちで、いっぱいにならなきゃならないのに、いまは、みんなのおこっているきもちでいっぱいで、かなしくて泣いている」って言ったってやつ、あれがまさにそうです。

それをきいたら、誰も彼に怒らなくなって、問題は解決しました。

 

「気持ちを言語化するって、とってもパワフルですね。」

 太郎:人は、自分の気持ちをないがしろにされたり、自分の力が及ばないところで他人に勝手に決められたり、ひどい扱いを受けるなど、ニーズが満たされなかった時に腹がたつのです。

だから、自分の気持ちとつながって、そして、それを相手に伝えて、

(受け入れてもらえないことはあるかもしれないけど、)

自分は、何が不満なのか明確に相手に伝わるのが大事なんです。

そうするとニーズを満たす方法が、お互い見えてきますからね。ここからは「頭」も使えばいいのです。

「どうしたらいいのか?」って。

 モヤモヤしたものを抱えていると人はさらにいろんなトラブルをひきおこしていくのですが、その正体がはっきりすると、「平常心」にもどることができるのです。

 武道でも「平常心」が大事といわれるように、「平常心」にすぐにもどれることが、「心の強さ」にもつながると思っています。

 「心の強さ」がないと、「みんなと一緒にしておけば安全。」という思考になり、自分が本当にしたいことができなくなります。

 

「今、したいことが一番!をうたっている、森のようちえんでは、必須ですね!」

 太郎:そうですね。半年前から、そういう関わり方を意識してやるようになったのですが、くりかえし、くりかえし続けている結果、喧嘩やトラブルが起きても、前ほどおおごとにならなくなりました。

 だから、今年度、トラブって、傷ついてやめるってことがなかったですね。

 

「そういえば、去年は、サバンナだとか、野性味あふれる園の話を聞いていましたね。夏頃でもまだ、猿山だって言ってましたし。ちょっと、うちの子は繊細なので森のようちえんは難しいですといわれたことがあります。それが、この半年、ノンバイオレンス コミュニケーションで変わってきたということですね!」

 太郎:(笑)今では、やめる子もいないし、定員オーバーでキャンセル待ちです。

 普通の学校や社会では、なかなか難しいのが現状です。だから、ご家庭では、せめて、何かトラブっているなと思ったときは、「どうしたの?」ではなく「どういう気持ちなの?」とお子様にも、パートナーにも聞いてあげてみてはいかがでしょうか?

 

子供やスタッフたちが急激に成長していく様子を感じていた、森のようちえんウォッチャーとしては、ものすごく合点がいくインタビューとなりました。これは、もう、我が子の気持ちを聴くのを、とりいれないわけにはいきませんね!

 

このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。

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