園長インタビュー

【太郎さんのここが聞きたい!】VOL.94 性と生のおはなしシリーズ#7 大人になる前に知っておきたい「同意」前編

太郎さんと助産師の辻本有美さんによる「性と生のお話」。今回はこれから大人になる前に知っておきたいこと。ふたたび「同意」について、更に深くお話いただきました。

 

【自分がどうしたか分からないことないですか?】

有美:「同意」はいろんな意味で使われますが、「性と生のお話」の中では、「性的同意」の話を中心にお話しました。

「性的同意」ではお互いに積極的にそれを望んでいるか確認しましょうという話をしてきましたね。

性の話はいたるところで「同意」が絡んでくるので、ここでおさらいするのは大事かなって思っています。

今まで話をしなかった他の性のお話でも「同意」をもとに考えていくとわかりやすいです。

まず、「同意」の前に、「本当に自分がそれを望んでいる事かどうかわからないこと」ってお二人はないですか?

 

山田:太郎さんは、「今、やりたいことが一番」がスローガンなので、「本当に自分が望んでいることかどうかわからない」なんてないんじゃないですか?

 

太郎:僕の場合、望んでいるかどうかわからないというより、望んでいても自分の準備ができていないということがあるんです。

例えば、この性のお話についても、息子達に伝えたい、伝える事が重要だと思っていても、ずっと出来なかった。

どう話したら良いか分からなかったのが、今回、有美さんに来てもらって、準備ができて、話が出来たんです。

望んでいても自分自身に「同意」がとれるまでに時間がかかることがあるなって、この一年で実感しています。

だから、「同意」できるタイミングってあるなって。

 

有美:性にかぎらず、詩乃さんも「本当に自分が望んでいるかどうかわからない」ってことってありますか?

 

山田:それはいろんな場面でありますね。例えば、ワクチン接種なんかのように、自分の中に、相反する二つの価値観があるとき、本当に自分がどちらを望んでいるのか、わからなくなることがあります。

 

有美:そうですね。「同意」の前に、まず、自分のことをどれだけ分かっているかが大事なんです。

「同意」はお互いの「選択」が一致してこそですが、自分がわからないとベストな「選択」は難しいです。

相手との関係性の中で、相手の望みと自分の望みのすりあわせが上手く出来なくなります。

太郎さんが言うタイミングについても、まず自分が分からないと、お互いとって、どこがベストタイミングなのか分かりません。

そもそも、自分がどうしたいか分からないと、「同意」するかしないかの判断は難しいんです。

 

【同意のために何が必要か?】

有美:「同意」のために必要なものは、まず、絶対にNOと言ってもいい環境が整っていることです。

でも、NOと言いにくい場面はたくさんあって、自分がはっきりとのぞんでいるか分からない場面は余計言いにくい。だからこそ、なおさら、NOを言って良い場作りが大事なんです。

さらに、対等な関係であることも必要です。彼氏彼女の場合は、好きな方が弱い立場になりやすいですけどね。

あと、何についての「同意」をとっているのか、共通認識ができていることが大事です。

例えば、

「手をつないでいい?」

といってOKをもらえたとして、その先もOKではないかもしれない。

どこまでがOKで、どこまでがNOなのか、

お互いきっちり理解ができていることが大事です。

でも、簡単ではないと思うんですが、太郎さんはどうでしたか?

手をつないでOKなら、肩を抱いたり、腰に手を回しても大丈夫と思いますか?

 

太郎:僕は昔、年上の方とおつきあいしたことがあって、僕の方がタジタジでしたね。

僕はお付き合いは、手をつないで、キスをするというイメージだったのに、相手はもうお付き合いするとなったら、キスをするという感じで、

「え!いきなり、そこにいっちゃうの?」

というびっくり感があったんだけど

バックボーンによって、お付き合いで思い描いているものが違うんだなって思ったんですよ。

だから、男性だからではなく、その人が過去、どんな体験をしてきたかによってちがうんじゃないでしょうか?

 

有美:そうですね。今、太郎さんの話を伺って気付いたんですが、

ついつい、たとえ話でも、男性の方が積極的で女性の方が受け身である風に話してしまいがちですが、

太郎さんのように、気持ちの準備ができていない立場におかれたときに、

男性の方がNOって言いにくいかもしれないですね。

 

太郎:言いにくいですね。好きだって言ってもらったのは嬉しいし、

「でも、手もつないでもいないですけど」

って、あのときは、相当どぎまぎしましたね。

好きって言ってから、キスまでは3ヶ月ぐらいかかるって

勝手なイメージもあったし、ウブだったですけどね。

外国とか文化が違ったらもっとでしょうね。

 

有美:太郎さんの場合は嬉しかったから、驚いたかもしれないけど、結果はOKだったと思うんですが、

それが、嫌だった場合、今日は想定してなくて自信がないとか、恥ずかしいとかでも、NOって男性から言い難くないですか。

女性も、男性に断られるって想定してないだろうって思ったり。

相手のことが嫌いな訳ではないけど、NOって言うと相手のことを否定するみたいにとられるんじゃないかって。

相手を好きであればあるほど、NOって言って、嫌いって思われたらどうしようって。

そういう複雑なこともでてくるかな・・。

 

ここで、私、山田から、現在、放送されている「和田家の男たち」「ヤンキーくんと白杖ガール」という二つのドラマの話をさせていただきました。この、どちらも、まさに、有美さんが話している男女のおつきあいの「同意」がテーマで、しかも、気持ちに繊細に描かれていることを報告しました。

 

有美:昔のドラマって、男性が女性を押し倒すイメージだったのですが、時代はかわったんですかね。

もしかしたら、制作者が私たちと同世代だから、今まで生きてきて、だいぶ、痛い思いして、

「やっぱり、同意が大事だ。」

と気付いて、それを表現しようって思ったかもしれないですね。

ドラマのかたちで発信して、これから、大人になる世代に伝えていくのが大事だと思ったりしているかも。

一世代かわると、いろいろ変わりますからね。でも、良いことですね。

 

(後編へ続きます)

 

このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。

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