前回、森のようちえん附属の中高等部の教育理念についてお伺いしました。今回は、中高等部の皆さんが行うプロジェクト学習についてです。
太郎:中高等部の目玉はプロジェクト学習についてお話しますね。
実は高校生たちに株式会社を作ってもらおうと思っています。会社名は「株式会社高校生」
前回お話したように、コミュニケーションの学びをしっかりした信頼関係のあるメンバーでやれば、良い会社ができると思うんです。
プロジェクト学習の域にとどまらず収益もあげていってもらうつもりです。
そして、卒業とともに会社は辞めていただくシステム。
山田「斬新なアイデアですね!どこから発想したのですか?」
太郎:今の普通の学校は個人戦です。学習も総合力を求められる。そして、いつも、テストでは周りより上をめざさなくてはならない。
でも、社会に出て、会社に入るとチーム戦。自分の得意なところを出して、力をあわせて利益を生むのが目的です。だれかを蹴落とさなくていい。
なのに、会社でやることを学校でやらせてもらっていない。部活は会社に近いですけど。
社会にでれば、現状に対してもっといいものができないか、前向きに否定的な見方ができるかも大事です。経営者は否定的な意見を受け入れてこそ会社は伸びます。
でも、普通の学校では
「先生のいうことは正しいから聞きなさい。学びなさい。」
と押しつけられる。
これで本当に正しいのか?もっと良い方法はないのかという思考は、実際に会社で実務をやるなかで身につけていく場合がほとんどです。でも株式会社高校生ならそれが高校時代から学べるんです。
山田「なるほど。」
太郎:僕は最近話題の、ティール組織(上下関係がない、期限がない、目標設定がない 意思決定機関がない)をこの株式会社高校生にとりいれたらと考えました。
今までの組織では、意思決定がおそい。上に行く頃には、ビジネスチャンスの旬がおわっているからです。
株式会社高校生では、だれが、意思決定をしてもいいけど、ちゃんとまわりのアドバイスを聞く約束で動きます。
だれかが、何かをやりたいと思いつくでしょ。
まず、
「誰に相談しよう?」
からスタートです。企画書をかいて、プレゼンして共感してもらったら、プロジェクトはすすめられます。
その企画次第で、いろんな技術を持った子が必要です。そのときどきでプロジェクトチームができます。
山田「お給料は払われるのですか?」
太郎:いいえ。人件費は発生しません。むしろ、学費を払って会社づくりを体験してもらう形です。
稼げたお金は税引きをストックし、新たな自分たちのプロジェクトにつかってもらいます。
もし、余剰金が大きくでたら、校舎を建て直しに使う予定です。
すごくないですか?自分たちの力で自分たちの学校の校舎を建て替えられるんですよ。
登校日というか出社日は、月火水木で、金、土、日はバイトをしやすいように休みにしました。
もし、カフェをやりたいなら、カフェでバイトしながら、そのノウハウやシステムを実地で学んで来てくれたら良いと思うんです。
この話を、僕のお金持ちの知人にしたら、
「そんな高校生たちにはぜひ支援、出資したくなる。」
といわれました。
山田「確かに高校生は応援されやすいでしょうね。高島の地域の発展にもなるし。」
太郎:彼らは、生まれた時からスマホがあるデジタルネイティブですし、可能性は無限です。僕ができるのは、彼らの能力を邪魔しないように、トライの体験の場をつくること。だから、期限もきめないし、売り上げ目標も決めません。
自己否定、自分の認めたくない面を受け入れたり、友達のそういう面を受け止めた子達がいろいろ挑戦していけるように、僕は支援というより、一緒に歩んでいければと考えています。
山田「太郎さんは子供たちにどんな仕事をさせたいとかあるのですか?」
太郎:最初はプロジェクト的に地域おこしや自然関係の仕事を考えていました。きっと、子供たちもそのあたりは取り組みやすいでしょ。でも、単なる高校生のプロジェクトじゃなくて、一番、経験させたかったのは、マジに稼がせることだと気付いたんです。
高校生になれば取締役になれるし。税のことは、僕の税理士さんが教えてくれます。いろんな大人が助けてくれます。
そして、仕事は本来、お金を稼ぐためにやるんじゃないってことも学んで欲しいんです。
山田「一番経験させたいのは、マジに稼がせる事なのに、仕事はお金を稼ぐためにやるんじゃないってことを学んで欲しいんですね?」
太郎:そうなんです。お金を稼ぐための仕事は時間の切り売りになります。そうではなく、自分がしたいプロジェクトのために、ここの店のこれがしりたいとか、自分のスキルアップのために働いて欲しいんです。そして、純粋に誰かの役にたつことが嬉しいという感覚。
それが、人の幸せにつながっていると僕は思うので。
高校生は、まだ親の庇護の中だから、この感覚を身につけられるんです。
これを、プロジェクトではなく、ちゃんとお金が入ってくるよう会社を運営させられれば、卒業時に自分のアイデアが大きく育つと思うんなら、もう一回会社を始めれば良いんです。
起業家になってもいいし。
専門性を身につけるため専門学校にいってもいいし。
大学で学問を深めても良いし。
地域で仕事についてもいいし。
山田「それは自然なながれでできそうですね。」
太郎:なんとなく、大学にいくのではなく。卒業時はここにいきたいから行くと進路をきめられていると思います。
それとね、ここからは僕側の事情ですが、学校運営で一番大変なのは校舎の建て替えなんですよ。
国から支援されないとフリースクールでは無理だと言われました。
この校舎も30年後にはたてかえが必要でそうなると。億を超える金額が必要です。
でも、このやりかたなら、旨く行けば、子供たちが学校を建てかえられるんです。
卒業生は成功している人もいるだろうから、お金をだしてもらうこともできるでしょう。
山田「設立資金はどうするんですか?」
太郎:株式を発行して投資家を集めたいと思っています。10000円1000株とか。事業が成功したら配当だしたり、いずれは株の買い戻しも出来るようにして。負債はつくらない運営を目指します。
山田「リアルなモノポリーですね。」
太郎:本当にワクワクします。株式会社高校生は社会貢献出来る子がどんどん生まれて。お互いが顔を見える関係で仕事を発注しあえる理想的な環境です。社長も、裏方も、経験出来、やりたいことが出来ます。
山田「中学生は?」
太郎:中学生は高校生の補佐です。見習いですね。
前回も話しましたが、中学部は小学部にふくまれてもいいし高校に入っても良いし。
その子のタイミングで大人になること選べるんです。
山田「これだけの内容があっという間に動き出しましたね。」
太郎:行政の人が
「地元を味方につけたのが大きかった。」
と言っていました。
地元としてもありがたいそうです。イベントだと、知らない人が毎回来る度に緊張するけど、
高校生が根をはって何かするのは安心するって。
秋が説明会のスタートで、正式スタートは春です。
問い合わせもはいっていて、帰国子女の受け入れ先としても打診を受けています。
マスコミの取材依頼もあるそうで、今後ますます注目されそうですね。
なにより、太郎さんのワクワクが凄かったです。日本人学校とつながることで、海外の拠点も増えるし、いつか文部科学省からもモデル校として視察がくるかもしれませんね。
このブログシリーズは「さつきやま森のようちえん」の元保護者で、太郎旅の参加者でもあるライターの山田詩乃が、読者目線で、太郎さんに今、聞きたい事をインタビューし、まとめたものです。
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